整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
認知機能
更新日:2024/11/01
指先は体の中でも運動や感覚の神経が多く、指を動かすことで脳に刺激が加わります。そのため、指の体操を行うことで脳の活性化になると考えられています。そこで今回は、高齢者施設やデイサービスでも椅子に座って安全に脳トレができる指体操の仕方を全11種ご紹介します。高齢者向けの体操やレクリエーションの1つとして取り組んでみてはいかがでしょうか?
この記事の目次
指体操をすると「認知症の予防になる」「脳が活性化する」などと一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
ではなぜ、ご高齢者の脳の活性化に指体操が良いのでしょうか?
その所以(ゆえん)について解説します。
こちらの図は、カナダの脳外科医ペンフィールドが、人間の脳にある運動野と感覚野が体の部位のどれくらいの割合を締めるのかを大きさで表したものです。
この図を見ると、私たちの体は「首から顔面」「手首から指先」感覚や運動の脳の中枢領域が特に広く描かれていることがわかります。つまりは、体の中でも「指さき」は触覚が敏感であるといえますし、運動もより細かい精緻な運動ができるように神経が密に分布しているという事がわかります。
道具を使わず、座って簡単に出来る手・指・足首・足指のリハビリ体操について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎手指のリハビリ方法| 高齢者の指先リハビリ・手遊び・トレーニング
上記のことから指さきを動かす体操は、ご高齢者の脳の活性化や認知症の予防だけでなく、運動機能を高める効果が期待できると考えられます。具体的に解説します
指先には多くの神経が集まっており、手や指を動かすことで脳に刺激を与えることができます。特に、複雑な指の動きは脳の前頭葉を活性化させ、思考や記憶、判断力に関与する脳の部分を活発にします。指体操はそのため、脳の働きを促進し、認知症予防に役立つと考えられています。日常的に指先を使うことで、神経回路が強化され、脳の衰えを防ぐ効果が期待されます。
整容動作とは、顔を洗う、髪をとかす、歯を磨くなどの身だしなみを整える動作です。指体操により、指の柔軟性や手の筋力が向上することで、これらの動作がよりスムーズに行えるようになります。指先の器用さが増すことで、細かい動作や自分で身の回りのことを行う際の自立性が高まり、生活の質を向上させることができます。
基本的な整容動作を支える筋力や能力を維持・向上させるための訓練について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
指先の感覚や動きのコントロールが向上することで、箸やスプーンなどの食器をしっかり持ち、細かな動作ができるようになります。これにより、食べ物をこぼす頻度が減り、食事がよりスムーズに行えるようになるでしょう。結果として、食事のストレスが軽減され、栄養摂取の効率も高まると考えられます。
自分のお箸で食事ができるようにするための機能訓練・リハビリ内容について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎お箸を使って自分で食事を摂るための機能訓練・リハビリ内容を紹介
指体操を行うことで、指先の神経や筋肉が刺激され、脳との連携が強化されます。その結果、手や指の動きがスムーズになり、日常生活での動作が向上します。また、指の柔軟性や筋力が高まり、全身のバランスや運動の協調性も改善されるため、運動機能全体が向上する効果があります。
デイサービスや高齢者施設でレクリエーションや集団体操を行う場合、様々な病気や身体能力が異なるご利用者様が安全に、しかもわかり易く取り組めるものを提案するのは一苦労です。
そこでオススメなのが「指体操」です!
指の体操は、指先が動かせる方であればいつでもどこでも気軽に楽しめ、椅子に座って安全に体操ができるのがその魅力の1つです。
今回は、指体操の中でも認知症などがある方でも比較的簡単に取り組める複雑なルールを除いた体操からご紹介していきます。
指を曲げる・回すなど簡単な指体操からペアでの指体操までご紹介するので少しずつレベルを上げて楽しみながら取り組んでいきましょう!
高齢者が安全に取り組める体操についてもっと知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎リハビリ体操 全22種|高齢者に最適な座ってできる運動方法とは
脳機能や身体機能の維持・向上につながる「脳トレ」レクリエーションについて知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎脳トレで認知症予防!高齢者向けレクリエーション20選
ご高齢者が楽しみながら脳の活性化ができる指体操をご紹介していきます。まずは、簡単な指折り体操から始めていきましょう。指折り体操は、親指から順番に小指まで数を数えながら1本ずつ指を曲げる体操です。
【指体操の手順】
順番に10まで数えるとすると3・4に位置する「中指」と「薬指」が曲げにくいのでゆっくりと意識して取り組んでいきましょう。
次に、指体操としてご紹介するのは、指回し体操です。手遊びの1つで、両手の親指から小指まで1つずつ指を回していきます。回している指が当たらないように意識して取り組むことで運動機能や脳の活性化を促していきましょう。
【指体操の手順】
続いての指体操は、指先を離す体操です。こちらも指遊びの1つで親指〜小指まで1本ずつ順番に指を離していきます。指の体操は、脳の活性化や運動機能を高めるだけでなく、日常生活の中でも食事やボタン留め、小銭を扱うなど細かい動作が必要になります。
【指体操の手順】
こちらも4番目の薬指を離す際に、他の指が離れてしまいがちです。
こちらの指体操は、親指と他の4本の指を合わせる親指体操です。この運動は、対立運動と呼ばれ、人間に一番近いと言われるゴリラや猿などでもこの動きはスムーズにできません。人間は、この対立運動によって「つまみ」や「つかみ」などの細かな動きができるのです。
【指体操の手順】
親指体操では、「小指」「中指」と合わせる指をスタッフが指定するなどルールを決めることで難易度を高めたり、皆さんで楽しみながら取り組むことができますよ。
これまでご紹介した指体操に比べて難易度を高くした体操をご紹介します。
ご高齢者が指を動かすことに慣れてきたら少し難易度を高めた指の運動も取り入れてみましょう。脳の活性化を促すためには慣れは禁物です。脳の活性化を促すためには、最初はできない少し難しい程度の難易度が最適です。ギターの弦を押さえるように指を動かしていきましょう。
【指体操の手順】
ご高齢者の場合は大きな病気がなくても指の関節が硬くなったり(拘縮)動かしにくくなります。脳の活性化だけでなく、指をスムーズに動かすことを目的に日頃から指さきの体操を提案していきましょう
ここからは「輪ゴム」を活用した2本指の体操をご紹介します。指先の巧緻動作を行うことで脳の活性化を促すというよりもゴムの抵抗を利用して「背側骨間筋」と呼ばれる手のひらの筋肉を鍛える体操となります。
【指体操の手順】
この体操は、2本の指同士のトレーニングです。全指を対応させる場合はセラプラストなどを使った運動をお勧めします。
こちらは輪ゴムを活用した親指と中指・薬指の3本の指の体操です。主に、親指の母指外転筋や指の伸筋群の筋力アップに効果が期待できます。輪ゴムは日用品としてどの家庭にも置いてあるものです。デイサービスなどの介護現場の指体操にちょっとした道具を活用してみるもの体操を楽しむことができますよ。
【指体操の手順】
ここからはパートナーと共に2人組で楽しめる指体操のご紹介です。通常のじゃんけんをするのではなく、パートナーが出す手に対して後出しジャンケンで「負ける」ように条件付けを行うことで脳の活性化(前頭葉機能)を促すことができます。
【指体操の手順】
じゃんけんの条件を「あいこにする」「順番に勝ち→あいこ→負ける」など複雑にすることで、難易度が高まり脳の活性化(前頭葉機能)を促すことができます。少し間違える程度の条件付けをして指体操(じゃんけん)を行なっていきましょう!
こちらの指体操も、二人組みの指体操(じゃんけん)です。通常のじゃんけんではなく、両手で後出しジャンケンをすることで、さらに指体操の難易度を高めることができます。条件を「左手が勝ち、右手は負け」「両手をあいこにする」「順番に勝ち→あいこ→負ける」など複雑にすることで脳も活性化しやすくなります。
【指体操の手順】
若者でも間違えやすい指の体操です。パートナーと間違えを楽しみながら指体操に励んでみて下さい!
OK指体操とは埼玉成恵会病院健康管理センターの竹内東太郎医師が2010年に考案した体操です。OK指体操の、「O」は「音楽」、「K」は「訓練・健康」の頭文字であり、手足の指を曲げたり伸ばしたり、開いたり閉じたり、歌に合わせてリズミカルに続ける運動のことです。この体操は、椅子に座った状態で行い、手の指・腕の運動が4種類、足の指・足の運動が3種類、全7種類で構成されています。
指先は、日頃行うことのない運動のため、指体操を行ったあとは手や手首が疲れてしまう方も多くいらっしゃいます。そのため、指体操の後は必ずクールダウンとして手首の柔軟体操も行なうようにしましょう。
こちらの運動は、指体操の後のクールダウンとして取り組んでいただいたい手首のストレッチです。手首をメインにしたストレッチですが、その中でも親指は、指の運動の中でもつまみ・摘むなどの対立運動を行う部位です。日常生活の中でも活躍の頻度が多いため疲労が溜まりやすい部分でもあります。合わせてストレッチしていきましょう。
【運動の注意点】
【回数】
20秒×5回を目安に行いましょう。
指体操を行う際の注意点は、体操が効果的で安全に行えるようにするために非常に重要です。以下に、各注意点について説明します。
指体操は、参加者の身体能力や運動機能に応じて、無理のないレベルから始めることが大切です。難しい動作から始めてしまうと、指や手に無理な負担がかかり、逆に筋肉や関節を痛める可能性があります。
指体操は手や指を使う運動ですが、無理に動かしたり、長時間続けたりすることで、筋肉や関節に負担がかかることがあります。特に、高齢者やリハビリ中の方は、指だけでなく手首や腕、肩などにも負担がかかることがあるので、無理なく行うことが重要です。
高齢者施設や通所介護などでも椅子に座って安全に脳トレができる「指体操」の方法をご紹介しました。
片麻痺や骨折、糖尿病、パーキンソン病など利用者様の疾患や身体状況が異なる介護現場では、みなさんが参加できる体操を提案することは一苦労です…
そのような場合に指体操は、片手しか動かせない方でも車椅子の方でも比較的簡単に取り組むことができる集団体操にも適した運動です。今回の体操方法を参考に、皆さんの事業所でも指体操に取り組んでいただければ幸いです!
ちなみに…
指体操の方法には今回ご紹介した「輪ゴム」や「ペア」で行う方法以外にも「セラプラスト」と言われる粘土状の道具を使用した体操もあります。
セラプラストは、商品名「セラピーパテ」として1,500円前後で販売され、6段階に硬さを色分けされているので自分にあった硬さで指の体操をすることができます。粘土で形を作ったり、調理訓練などの練習としても楽しみながら活用できる便利な道具ですので、指体操の道具として準備しておくと便利ですよ。
指体操として活用できるセラプラストの使い方については以下の記事でご紹介しています。興味がある方はこちらの記事をご覧ください。
▶︎セラプラストを使用した手指のリハビリプログラム |全14種
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