整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
下肢
更新日:2024/09/10
体幹のインナーユニットの一つである「多裂筋」のトレーニングとストレッチをご紹介します。多裂筋は、背中の脊柱に付着する筋肉で腰痛との関連性も示唆されています。本稿では、多裂筋の機能的な構造を理解することはもちろん、対象者の能力を評価した上で適切な運動が指導できるように多裂筋の姿勢別のトレーニングとストレッチをご紹介します。明日からぜひチャレンジしてみてください。
この記事の目次
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多裂筋は、首から腰の脊椎の椎体をまたいで付着する小さな筋肉で、両側の多裂筋が働くと脊柱の伸展し、片側が働くことで脊柱を回旋、側屈する働きがあります。しかしながら、その働きのほどんどは大きな運動はなく、わずかに動く程度です。
多裂筋を専門的にみてみると「腰多裂筋」と「胸多裂筋」「頸多裂筋」の3つの筋肉に分類されます。特に、仙骨から腰椎に付着する「腰多裂筋」は5つの筋束から形成されており、脊柱を支える(安定させる)ために非常に重要な筋肉となります。
【多裂筋の働き】
両側の多裂筋が働くことにより腰を反る(伸展)
反対側の多裂筋が働くことにより脊椎のをひねる(回旋)
同側の多裂筋が働くことにより脊椎を横に倒す(側屈)
脊椎と脊椎同士を連結させ、脊柱を安定させる(固定性)
【多裂筋の起始】
仙骨、仙腸靭帯、腰椎乳頭突起、胸椎横突起、頚椎関節突起に付着する
【多裂筋の停止】
第5腰椎から第2頚椎の隣接する(2〜4個の椎骨をまたいぐ)椎体の棘突起に付着する
【多裂筋の神経支配】
頚神経、胸神経、腰神経
【起始と停止から考える解剖学的知見】
腰部多裂筋は、腰部骨盤帯の安定に重要な役割を果たし、調和のとれた動作を可能にします。一方で腰部多裂筋の活動性の低下は、動作の緩慢のみならず、腰痛などの問題を引き起こす要因にもなります。
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多裂筋は、体幹の回旋時に作用する筋として知られており、多裂筋をストレッチしたりトレーニングすることは、ゴルフやテニスなどの回旋運動をスポーツにおいて、怪我や腰痛予防に非常に重要です。
生方ら(2014)の研究によると「疼痛側の多裂筋は筋スパズムを発生させ疼痛が生じ筋力低下と筋萎縮を呈しており,非疼痛側の多裂筋は代償的に弛緩しているため,疼痛側だけでなく非疼痛側へもアプローチする必要があることが示唆された」と報告しており、多裂筋と腰痛の関係性について説明しています。
これらのことから、回旋動作を伴うスポーツと腰痛を考える上で、「多裂筋」は無視できない筋であることがみてとれます。
少し専門的な話になりますが、背中に位置する多裂筋は、胸腰筋膜を介して腹横筋と連結します。そのため、多裂筋が働くと同時に、体幹のインナーマッスルである横隔膜や腹横筋、骨盤底筋群が同時に収縮します。
腰は、強固な骨や靭帯が少ない箇所のため運動時の負担も多くなります。そのため、これらの筋肉が腰回りを覆い、しっかりと働くことで『腰のコルセット』としての役割を担っています。
これらを十分に理解した上で、多裂筋のトレーニングやストレッチを適切に行っていくことで腰痛を軽減する効果が期待できます。それでは、次章より腰痛に効果的な多裂筋のトレーニングとストレッチの方法をご紹介していきます!
参照:生方瞳, 霍明, and 丸山仁司. “慢性腰痛症における多裂筋筋硬度の左右差について.” 理学療法科学 29.1 (2014): 101-104.(平成29年8月10日アクセス)
こちらの多裂筋の筋トレは、ダイアゴナルと呼ばれる体幹のトレーニングです。四つ這いで片側の手または足をあげて保持する際に、脊柱起立筋と多裂筋が働きます。多裂筋のトレーニングは、体幹のブレを少なくし腰痛を予防する効果が期待できます。両側の多裂筋を均等に鍛えていくようにしましょう。
【目標回数】
10秒保持×5セットを目安に左右の手足を行いましょう。
こちらの多裂筋の筋トレは、ダイアゴナルの応用編です。四つ這いで対側の上下肢をあげることで体幹筋(主に腹横筋や脊柱起立筋、大臀筋など)を鍛えることができますが、同時に背中の脊柱起立筋と多裂筋も働きます。スポーツ分野だけでなく、パーキンソン病の姿勢コントロールの訓練としても活躍します。運動の際は、背中が反らないように意識しましょう。
【目標回数】
左右交互に5秒保持×10回を目安に行いましょう。
こちらの多裂筋の筋トレは、背伸び運動です。篠原ら(2010)によると背伸び運動は、”胸椎部、腰椎部の脊柱起立筋群に対して筋力増強の可能性を示した”と報告しており、うつ伏せ姿勢になれないご高齢者の姿脊柱起立筋、多裂筋の背面筋のトレーニングとしてオススメです。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
こちらの多裂筋の筋トレは、できる限り前方に手を伸ばすことで脊柱起立筋や多裂筋の働きを賦活し、上体を起こす作用が働きます。運動の際は、両腕を床と水平を保つように意識しましょう。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
こちらの多裂筋の筋トレは、プランクと呼ばれる体幹のトレーニングです。主に腹筋群を鍛えることができますが、足を外に開く運動を合わせることで、背面筋である多裂筋にも鍛えることができます。可能な方は、横移動を加えるとより効果的です。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
続いて、多裂筋のストレッチ方法についてご紹介していきます。
こちらの運動は、椅子に座って背中を丸める多裂筋のストレッチです。ご自身の太ももを持ち、腕の牽引力を利用することで脊柱起立筋や多裂筋をストレッチすることができます。
【目標回数】
10回×3セットを目安に行いましょう。
こちらの運動は、タオルを活用した多裂筋のストレッチです。タオルを活用することで背中から腰に丸みを作り脊柱起立筋や多裂筋、半棘筋を効果的に伸ばしていくことができます。
【目標回数】
15秒×5回を目安に行いましょう。
こちらの運動は、テニスボールを活用した多裂筋のストレッチです。固いボールを使用するよりも、テニスボールなどの伸縮性のあるものをご利用することをお勧めします。ゴルフやテニスなどの回旋運動が多いスポーツでは、多裂筋を痛めている場合も多く、この筋の緩めた方が緩和するとは限らないので、注意しながら進めていきましょう。
【目標回数】
30秒程度×3回を目安に行いましょう。
こちらの運動は、四つ這いで背中を丸めることで多裂筋や脊柱起立筋をストレッチできます。一般的には、猫のポーズと呼ばれるこちらのストレッチは見た目以上に動作は難しくなります。運動の際は、息を大きく吐きながらおへそを見るように意識しましょう。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
こちらの運動は、仰向けでできる多裂筋のストレッチです。背中に付着する脊柱起立筋や多裂筋、腰方形筋などの背面の下部体幹の柔軟性を高めてくれることができます。腹筋に力が入り過ぎないように膝を抱き抱えたまま、ゴロゴロと前後に体を動かしていきましょう。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
姿勢別でできる腰方形筋のトレーニングについて知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。 ▶︎腰方形筋トレーニング 全8種|姿勢別でできる運動方法とは
こちらの運動は、立位でできる多裂筋のストレッチです。前屈運動は、一般的に膝の裏に付着するハムストリングスの柔軟性を高めることができますが、椅子を支えたままお尻を後方に引くように意識し、腰を丸めることで脊柱起立筋や多裂筋をストレッチすることができます。運動の際は、息を吐きながらゆっくりと伸ばしていきましょう。
【目標時間】
10秒程度×5回を目安に行いましょう。
運動初心者からスポーツをされている方まで取り組める姿勢別のハムストリングスのストレッチについて知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎姿勢別のハムストリングスストレッチ 全18種について
多裂筋のトレーニングについては様々な見解があり、対象者の運動能力によっても運動処方は変化します。本稿では一つの考え方を示唆するものであり、妥当性を検討したものでありません。あしからずご了承ください。
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