整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
療法
更新日:2024/10/31
介護の現場では、アザや内出血、乾燥、痒み、発赤などのご高齢者の皮膚トラブルをよく目にします。このようなご高齢者の皮膚の問題に対して、私たちスタッフはどのような対応を行えばよいのでしょうか?そこで今回は、現場で目にする皮膚トラブルのチェック方法から原因・対策方法までまとめてご紹介します。介護スタッフの基礎知識として把握しておきましょう。
この記事の目次
日頃から私たち介護スタッフが対応しているご高齢者の皮膚は、アザがあったり、乾燥していたりとさまざまな症状があります。
まず、私たち介護スタッフが行うことは、高齢者の起こりすい皮膚トラブルをチェックすることです!
ご高齢者の皮膚トラブルをチェックする場合は、肌の露出が多い入浴中やトイレの時にすると利用者様に精神的な負担もなく自然でよいでしょう。
ここからは、ご高齢者の皮膚トラブルについて、その原因と対策方法を考えていきましょう。
ご高齢者の肌のカサカサ(乾燥)の原因は、皮脂の分泌量の低下にあります。女性では40代、男性では50代以降に著明に低下してきます。この皮脂の減少により、肌のバリア機能が弱まり、外部からの刺激に対する抵抗力が低下し、同時に保湿力も低下します。
さらに、皮脂の分泌量が減ると、刺激に弱くなり保水力が低下するため、弾力を保つコラーゲンの生成も不活発になります。そのため、皮膚の弾力が失われ、シワができたり、肌がカサカサしてしまうのです。
【加湿する】
乾燥した環境では、肌の水分が蒸発しやすくなり、さらに乾燥が進行してしまいます。特に冬場や暖房を使用する室内は湿度が低下しやすく、肌に必要な水分が失われやすい状態になります。加湿することで、空気中の湿度を適度に保ち、肌からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥を緩和します。これにより、肌の水分保持能力が改善され、乾燥によるダメージを軽減することができます。
【保湿クリームを使用する】
保湿クリームは、肌に直接油分や水分を補給することで、乾燥から肌を守る役割を果たします。特に高齢者の肌は、皮脂の分泌が減少しているため、保湿クリームを使用することでバリア機能を補い、外部からの刺激や水分の蒸発を防ぎます。保湿成分が配合されたクリームを塗布することで、肌表面に保護膜を作り、肌の柔軟性や弾力を保つことができます。
【入浴温度をぬるま湯にする】
熱すぎるお湯は、肌の表面にある必要な皮脂を洗い流してしまい、乾燥を悪化させる原因になります。皮脂は肌の水分を保持するために重要な役割を果たしており、これが失われると肌のバリア機能が低下します。ぬるま湯での入浴は、肌への負担を軽減し、必要な皮脂を守りながら清潔に保つことができます。これにより、入浴後の肌の乾燥を予防し、自然な保湿状態を維持することができます。
【石鹸を泡立てて、やさしく肌を洗う】
肌を強くこすって洗うと、肌の表面にあるバリア層(皮脂や角質)がダメージを受けてしまい、乾燥や刺激を受けやすくなります。石鹸をしっかり泡立てることで、肌との摩擦を最小限に抑え、やさしく洗い上げることができます。適度に洗うことで、肌に必要な皮脂を残しつつ、汚れや汗を除去するため、乾燥を防ぎつつ肌の清潔を保つことができます。
ご高齢者の肌のトラブルとして皮下出血や皮膚剥離(はくり)の原因は、加齢に伴い、皮膚の細胞が減少して代謝機能・免疫細胞が衰えるため真皮・表皮の厚みが薄くなることにあります。さらに、毛細血管も破れやすくなります。そのため、軽く掴んだりした刺激が薄くなった皮膚を通じて奥まで達しやすく、毛細血管が破れて内出血(あざ)を起こしやすくなるのです。また、抗凝固剤やステロイド剤を服用されている場合は、内出血を起こしやすくなるため注意が必要です。
そのほかにも、糖尿病や肝機能障害などの疾患が潜んでいる場合もあります。その際は、医師や看護師に確認するようにしましょう。
【栄養の確保(総エネルギー量、蛋白質、アミノ酸、脂質、鉄分、亜鉛、銅、ビタミン)】
栄養素は、皮膚の健康と回復力を維持するために不可欠です。特に高齢者は、代謝が低下しているため、皮膚の再生や修復が遅くなります。蛋白質やアミノ酸は皮膚の構成成分であり、コラーゲンの生成を促進します。脂質は皮膚のバリア機能を強化し、乾燥や刺激から守ります。また、鉄分、亜鉛、銅は細胞の修復や血液の循環を助け、ビタミン(特にビタミンCやE)は抗酸化作用やコラーゲンの生成に寄与します。これらの栄養素が不足すると、皮膚が薄くなり、傷つきやすくなるため、適切な栄養を確保することは重要です。
【手袋やハイソックスで外傷を予防する】
手袋やハイソックスは、皮膚を外部からの摩擦や衝撃から保護するために有効です。高齢者の皮膚は薄く、脆くなっているため、日常生活の中で起こる軽い衝撃や擦れでも皮膚剥離や内出血を引き起こしやすくなっています。手袋やハイソックスを着用することで、転倒や物との接触による外傷を未然に防ぐことができ、肌の保護に役立ちます。
【椅子の脚や肘掛け部分にクッションや弾性包帯を巻く】
椅子の脚や肘掛けなどは、皮膚が直接接触しやすく、長時間当たっているとその部位に圧力が集中して皮膚が損傷しやすくなります。クッションや弾性包帯を巻くことで、圧力を分散させ、皮膚への負担を軽減することができます。これにより、内出血や皮膚剥離を予防し、快適に座ることができるようになります。
【保湿クリームやボディークリームを使用する】
保湿クリームやボディークリームを使用することで、皮膚に潤いを与え、乾燥を防ぐことができます。乾燥した皮膚は、脆く、外部からの刺激に弱くなり、内出血や皮膚剥離のリスクが高まります。特に高齢者の皮膚は水分を保持する力が低下しているため、クリームでバリア機能を補強し、皮膚の保護力を高めることが重要です。また、定期的な保湿により、皮膚の柔軟性も維持され、ダメージを受けにくくなります。
【洗体はやさしいタオル生地のものを使用する】
肌を洗う際に硬いタオルや強い力でこすると、皮膚が傷つきやすく、特に高齢者の薄くなった皮膚では皮膚剥離や内出血を引き起こす可能性があります。やさしいタオル生地やソフトなスポンジを使うことで、摩擦を最小限に抑え、皮膚を保護することができます。また、過度な洗浄は皮膚のバリア機能を担う皮脂を除去してしまうため、やさしく洗うことが重要です。
一般的に痒みがある場合、乾燥やアトピー性皮膚炎などを連想します。しかしながら、ご高齢者の皮膚トラブルとして痒みがある場合の原因は、「疥癬(かいせん)」が考えられます。
疥癬は、免疫機能が低下している場合に感染しやすくなります。そのなかでも「角化型疥癬」は、極めて小さなダニ(ヒゼンダニ)が皮膚の角質に寄生することで、人から人へと感染する病気です。
【飲み薬、塗り薬または、かゆみ止めを処方する】
痒みを感じると、掻くことで皮膚がさらに傷つき、炎症や感染症のリスクが高まります。飲み薬や塗り薬、かゆみ止めを適切に使用することで、痒みを抑え、皮膚のダメージを防ぐことができます。特に、高齢者の肌は薄く、脆いため、早期に適切な対策を取ることが重要です。角化型疥癬は、入浴では一般的に消滅しないとされているため、医師に相談の上、お薬を処方していただきましょう。
参照:公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「疥癬(かいせん)」(2016年11月26日アクセス)
ご高齢者の皮膚の痛みや赤みの原因として、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と「丹毒(たんどく)」があります。
蜂窩織炎は、皮膚の深層から皮下脂肪組織にかけて起こる化膿性感染症です。始めは、広範囲に赤く硬くなって腫れ、熱感と痛みをもちます。その後は、発熱や関節痛を伴うこともあります。
丹毒は、皮膚の浅い層の化膿連鎖球菌の感染によって起こる皮膚細菌感染症です。特に、高齢者や免疫力の低下した方に多く発症します。
また、どちらも早期に治療を行わないと、感染が広がり、重篤な状態になる可能性があるため、皮膚に痛みや赤みが見られた場合は、すぐに医師の診察を受けることが推奨されます。
【抗生物質の投与】
蜂窩織炎は細菌が原因の感染症であり、抗生物質によって細菌の増殖を抑え、感染を治療します。早期に抗生物質を投与することで、症状の悪化を防ぎ、感染が広がるのを抑えることができます。適切な抗生物質を使えば、通常2週間前後で症状が軽快しますが、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期治療が重要です。
【ペニシリン系抗菌薬の内服または注射】
丹毒は、化膿連鎖球菌という細菌が原因で起こる感染症で、ペニシリン系抗菌薬が非常に効果的です。これらの薬は細菌の活動を抑制し、感染の進行を止め、炎症や痛みを軽減します。早期に内服または注射で治療を開始すれば、症状は比較的早く軽快しますが、治療が遅れると感染が広がり、重篤な状態に進展することもあるため、迅速な対応が重要です。
ご高齢者の皮膚の状態は、利用者様から報告されない限り日常生活の中ではなかなか目が行き届きません。そのためご高齢者の皮膚トラブルは、服を脱ぐ場合の脱衣所やトイレの場面で発見することがほどんどです。つまり、利用者様と一番身近に接している「ケアスタッフの目」が大切になるのです!
みなさんが、皮膚トラブルを早期に発見し、医師や看護師に報告することで早期に対応でき完治もしやすくなります。そんなサービスができる事業所は、家族も安心して利用者様を送り出すことができます。
最後までご覧いただきありがとうございます。ご高齢者の皮膚トラブルの原因と対策方法は理解していただけましたか?
私たちスタッフが常日頃からご高齢者の皮膚状態に「気配り」「目配り」をするだけでなく、皮膚状態の変化をメモやカルテに記載し、変化を早期に発見することが重要になります。
これからもご利用者様が安心して生活できるように支援していきましょう!
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