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機能訓練
2024/11/01
機能訓練
療法
更新日:2024/10/04
誤嚥性肺炎は疾患別の死亡率を調査した厚生労働省のデータによると高齢者の死因の上位で、予防方法、原因となる起因菌・原因菌の種類、嚥下機能障害についてリスクマネジメントできるよう理解することが大切です。有効な予防方法は、肺炎球菌ワクチン予防接種、夜間の臥位姿勢や食事姿勢、嚥下機能トレーニング・口腔体操、食事形態などについて検査・評価し、レベルに応じた適切な関わりが必要です。嚥下前、嚥下後の不顕性誤嚥なども留意しましょう。
この記事の目次
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誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまう「誤嚥」が原因で発症する肺炎です。誤嚥性肺炎の発症には、飲み込みに関係する機能が低下する嚥下機能障害が背景にあります。
肺炎は、近年日本人の死因の第3位という高い割合を占めており、入院した高齢患者の肺炎の種類を調べたデータによると、80歳代の肺炎患者の約8割、90歳以上では9.5割以上が誤嚥性肺炎であったと報告されています。後期高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎であり、予防方法や対策で少しでもリスクを低下させるよう取り組みが望まれます。
誤嚥と聞くと、飲み込む時に気管に入ってしまったものだけかと思われてしまいますが、誤嚥は嚥下の時だけではなく口で咀嚼している時や、食べ終わって時間が経ってから寝ている時などもあります。
嚥下前誤嚥とは
嚥下前誤嚥とは、食べ物を口腔内にとどめることができない、嚥下反射の遅れや反射が起きないことにより、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと。
嚥下中誤嚥とは
嚥下中誤嚥とは、嚥下反射は間に合っているものの、気管を閉じる力が弱いため、食べ物が押し込まれてしまい、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと。
嚥下後誤嚥とは
嚥下後誤嚥とは、一口の量が多く、あるいは嚥下の力が弱いため咽頭などに食べ物が残り、あふれ出て食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと。
誤嚥性肺炎は、細菌を体内に取り込んでしまい感染を起こす感染症の一種です。現実的にはありませんが、細菌が全くいない唾液や食べ物が肺に入ってしまっても誤嚥性肺炎は発症しません。
誤嚥性肺炎の原因菌は、肺炎球菌が一番多いと言われています。この菌のほか、クレプシェラ菌、MRSA、緑膿菌、インフルエンザ菌などの種類の菌に起因して発症することもあります。
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人口10万に対する疾患別の死亡率を調査した厚生労働省のデータによると、悪性新生物(がん)は、死因の第1位となっています。
心疾患は、1997年以降は死因の第2位です。肺炎は、上昇傾向が続き、2011年には脳血管疾患を抜いて死因の第3位になっています。
死因の第3位である肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、70歳以上の高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎です。
平成26年の総患者数としては、糖尿病が300万人と推計され、主な精神疾患(統合失調症、気分障害、神経症性障害等の合計)、悪性新生物(がん)、脳血管疾患、虚血性心疾患が続いています。骨折、アルツハイマー病が増加傾向で、肺炎は横ばいの状態です。
入院肺炎症例における誤嚥性肺炎の割合を集計した厚生労働省のデータによると、肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、70歳以上の高齢者の肺炎の7割以上は誤嚥性肺炎でした。
高齢者になると誤嚥性肺炎のリスクは高まりますが、嚥下障害があるとさらにリスクが高くなります。嚥下障害の原因疾患について詳しく見てみると、脳梗塞が39.1%、脳出血が12.2%で約6割を占めます。
誤嚥性肺炎を引き起こす嚥下障害の原因疾患は脳卒中(脳梗塞・脳出血)が約6割を占め、脳卒中の後遺症が誤嚥性肺炎の発生に大きく関係していることが示唆されます。また、脳卒中に次ぎ、パーキンソン病や脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病を罹患している方も嚥下機能障害を生じやすく、誤嚥性肺炎の発症リスクが高いです。
誤嚥性肺炎の原因菌は、肺炎球菌が一番多く、テレビCMなどでも「肺炎球菌ワクチン」の予防接種を啓発しています。肺炎球菌ワクチンの予防接種は国の補助で受けることができます。
肺炎球菌ワクチンは、平成30年度までの間は、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の誕生日を迎える方が公費助成対象です。
平成31年度からは、接種日当日に65歳である方が公費助成対象となります。
誤嚥性肺炎は感染症に分類され、感染が成立しないようにすることが予防方法を考える時に大切です。誤嚥性肺炎の中には、食事中の誤嚥だけでなく、嚥下後誤嚥もあるため、予防のためには気管に原因菌が混じったものが入らないような姿勢でいることが誤嚥性肺炎の予防になります。
誤嚥性肺炎の予防のための夜間の臥位姿勢
食事のときは問題なく飲み込めていても、夜間などの臥床中に、知らない間に鼻や口の分泌物の誤嚥を繰り返していることがあります。嚥下反射の機能が低下することによって、見た目に現れにくい不顕性誤嚥や嚥下後誤嚥が生じます。介護状態で寝たきりの方は特に臥床中に唾液などが気管に流れ込んで起きる誤嚥性肺炎に注意が必要です。
そのために、夜間のベッド上の臥位姿勢では、頭の位置を少し上げておく姿勢をとることで誤嚥を予防することができます。
誤嚥性肺炎の予防のための食事姿勢と介助方法
誤嚥は嚥下中に食べ物が気管に入ってしまう嚥下中誤嚥も対策が必要です。食事の時には飲み込みをしやすい姿勢を作ることが大切です。食事の時には座った際に「体幹と頸部の後屈」が起こらないように注意することが必要です。特に飲み込む時には顎を引いた姿勢で食事ができるようにしましょう。
誤嚥を予防するための食事の介助方法については、「食事介助の基本的な姿勢・注意点と麻痺・認知症などの症例ごとのポイントを紹介!」で詳しく解説説しています。
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誤嚥性肺炎の予防には嚥下障害(飲み込みの障害)に対して、飲み込みの訓練を直接行う直接的なトレーニングがあります。
嚥下障害に対する直接トレーニングでは、柔らかいものから段階的に食事形態を調整し実際に食べ物を飲み込むことを目標とした訓練を行います。
よく行われるトレーニングとしては、飲み込んだ後も何度か咀嚼して残渣(口腔内に残る物)を防ぐ「複数回嚥下訓練」や食物と少量の水分など形状の異なる物を交互に摂取する「交互嚥下訓練」などが用いられます。
直接訓練は場合によってはトレーニング中に誤嚥を生じさせる可能性もあるため、必ず専門職に相談し吸引器などを準備した状態で行うのが望ましいでしょう。
嚥下障害に対する間接的なトレーニングとは、嚥下のための準備や機能訓練といった内容で実際に食べ物や飲み物は使いません。
トレーニングの内容としては、口唇や舌、頬の運動や「パタカラ体操」などの発声練習・口腔体操、口腔ケアの際のアイスマッサージ、呼吸筋のリラクゼーションが行われることが多いです。病院ではなく在宅やデイサービスなどで、ご家族や介護職員でも危険なく取り組めるため、嚥下機能を予防していくにはとても大切になります。
嚥下機能に対する具体的なトレーニングは、「誤嚥性肺炎の予防法 高齢者に効果的な口腔機能のトレーニング方法」や「効果的な口腔体操の方法 パタカラ体操や高齢者向け早口言葉などを紹介」で詳しく紹介しています。
誤嚥性肺炎の予防として、病原菌のエサになる食べカスは歯磨き・入れ歯洗浄・うがいなどの口腔ケアを行いすぐにでも取りましょう。ほとんどの人にとっては食後すぐの歯磨きとうがいが良いと考えます。
ご高齢者に限らず、口腔ケアを怠って食べ物が口の中に残っていたり、唾液に混じったままで時間が経つと、台所やお風呂の排水のネバネバした部分のように雑菌が繁殖してしまいます。これをバイオフィルムといい、口腔内の隙間や歯の間などに強力に残ってしまい除去しにくくなってしまいます。若くて健全な方ならば免疫機能や体力がありますし、気管に流れ込んで誤嚥性肺炎を生じる前に歯科でとってもらったり、唾液に交えて飲み込んでしまったり、咳払いをして定期的に排出したりできますが、ご高齢者ではどんどんたまってしまいます。
高齢者の口腔ケア方法としては、「歯を磨く」というものでなく、歯肉や頰、歯間などまで含めて残渣や残りカスが無いようにすることが歯科衛生や誤嚥性肺炎予防い大切です。詳しい口腔ケアの方法は「口腔ケアの手順や観察項目を含む注意点について解説!」や「高齢者の口腔ケアの目的と効果【介護スタッフの基礎知識】」で解説しています。
誤嚥が原因の肺炎が誤嚥性肺炎ですが、食事形態の調整が重要です。嚥下状態に合わせて飲み込みやすい食事形態を評価して取り入れていくことが予防で大切です。
また、「唾液腺マッサージの効果とマッサージ・ストレッチ方法の基礎知識」で紹介しているように、食事の前の準備体操も大切です。
日本介護食品協議会を中心として、ユニバーサルデザインフードなどの規格化も進んでおり、「食べやすさ」に着目し食べる人の「かむ力」と「飲み込む力」に合わせた「介護食」のことで、嚥下や口腔機能の状態に合わせて食事形態を4段階に分け市販されています。
適切な食事形態を知るために、嚥下機能についての診療を行なっている病院や歯科などの医療機関を通して嚥下機能検査をしてもらうことや、通所リハビリテーションなどで言語聴覚士が在籍しているところで評価してもらい意見をもらうなどの方法があります。
高齢者の死因の上位となっている誤嚥性肺炎の原因や予防方法について紹介しました。
誤嚥性肺炎は体力や免疫力の低下した高齢者にとっては命に関わる疾患です。介護職員、看護職員、リハビリテーション職など、生活を支える人たちの予防意識で、誤嚥性肺炎になるリスクを減らすことはできます。誤嚥性肺炎の予防方法を考えるときの参考になれば幸いです。
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