ウェルビーイングって何?デイサービスの質向上に寄与する5つの要素

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更新日:2023/09/20

ウェルビーイングという言葉をご存知ですか?「最近よく聞くようになったけど、どんな意味?」「介護業界にも必要なもの?」と考えるデイサービスの管理者や経営者の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。今回、有限会社リハビリの風にて施設部門の管理責任者として勤務する阿部洋輔さんに幸福や幸せを包括的に表現する概念であるウェルビーイングについてわかりやすく解説していただきました。デイサービスの利用者と職員のウェルビーイング向上は、デイサービスの品質アップや職員と利用者の満足度向上につながり、経営にも好影響を与える可能性があるので、ぜひご一読ください。  

まず抑えたい!ウェルビーイングの基本

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的な健康の状態を総合的に表す概念です。広い意味での幸福や多面的な幸せを包含する言葉になります。

世界保健機関(WHO)の憲章において、健康について説明される前文に、「ウェルビーイング」という言葉が使用されています。それによると、「健康とは、病気がないだけでなく、肉体的、精神的、そして社会的な側面がすべて満たされた状態であること」を指します。

日本では、厚生労働省が「ウェルビーイング」を以下のように定義しているので紹介しましょう。「個人が自己実現の権利を持ち、身体的、精神的、社会的に健全な状態にあることを指す概念」。これらの定義はWHOのものとは少し異なりますが、「身体的、精神的、社会的な側面が充実していること」というウェルビーイングの基本的な考え方は一致しています。

ウェルビーイングを高める5つの要素PERMAモデル

ポジティブ心理学の創始者として知られるセリグマン教授は、5つの要素によってウェルビーイングが構成されると提唱しています。5つの要素の頭文字からPERMAモデルと呼ばれています。それぞれの要素を紹介しましょう。

①ポジティブな感情(Positive Emotion)

ポジティブな感情を抱くことは幸福のきざしであり、身体的、知的、心理的、社会的な豊かさに寄与します。ポジティブな感情は、希望、興味、喜び、愛、思いやり、誇り、感謝のような気持ちを指します。

ポジティブな感情を高める方法としては、例えば以下などがあります。

  • 大切な人と過ごす
  • 趣味や楽しいアクティビティに参加する
  • 感謝の気持ちや成功体験を振り返る

②エンゲージメント(Engagement)

エンゲージメントとは、仕事などの活動に完全に集中している状態であり、幸福感の一形態です。これは、フロー状態とも呼ばれます。

エンゲージメントを高める方法としては、例えば以下などがあります。

  • 好きな活動に参加する
  • 仕事や日常の活動に集中する訓練を行う
  • 自身の強みを認識し、発揮する

③他者との良好な関係(Relationship)

良好な関係は、他者からの支えや愛情を感じ、大切にされていると感じる状態です。他者には、パートナー、友人、家族、同僚、上司、コミュニティなどが含まれます。

他者との良好な関係を築く方法としては、例えば以下などがあります。

  • 興味を持つグループに参加する
  • 知らない人に質問をして、相手を理解しようと努力する
  • しばらく連絡を取っていない人とコミュニケーションをとる

④生きる意味や意義の自覚(Meaning)

人生に目的を持つことは、幸福につながるだけでなく、挑戦や逆境に立ち向かうときに支えにもなります。これは、仕事やボランティア、コミュニティなどを通じて得られることがあります。

生きる目的や意義を見つける方法としては、例えば以下などがあります。

  • 目標を見つけるために新しい活動や組織に参加する
  • 創造的な活動に挑戦する
  • 他人の役に立つことに情熱を傾ける

⑤達成感(Accomplishment)

達成感は、目標に向かって努力し、それを達成すること、そしてその結果に満足感を感じることを指します。達成感は自己評価を高め、幸福感をもたらします。

達成感を得る方法としては、例えば以下などがあります。

  • 具体的で測定可能で達成可能な目標を設定する
  • 過去の成功体験を振り返る
  • 成功した際に自己評価を高めるために自分を褒める

ウェルビーイングを向上させるためには、セリグマン教授が提唱したPERMAモデルの5つの要素をより良くしていくことが非常に大切です。

ウェルビーイングはデイサービスにも効果的

デイサービスを構成するのは大きくわけると「職員」と「利用者」です。両者のウェルビーイングを高めると一体どのような効果が出るでしょうか?

デイサービスの利用者と職員のウェルビーイングが向上することは、職員のサービス品質の向上、職員や利用者の満足度の向上など、さまざまなメリットをもたらします。そしてそれは経営にも大きな影響を与えます。職員や利用者の満足度が高ければ、デイサービスの評判が良くなり、利用者の増加や採用活動が容易になるなどの影響が出ることが考えられます。ウェルビーイングはデイサービスにも効果的にプラスの影響を与えるのです。

職員のウェルビーイングを向上するには

職員のウェルビーイングを向上するためのアイデアを、PERMAモデルをベースにして紹介します。

ポジティブな感情 (Positive Emotion)

  • 毎日の感謝:職員が毎日の業務や生活で感謝の瞬間を意識的に作るよう支援します。
  • 笑顔とポジティブなコミュニケーション:職員同士のコミュニケーションを促します。日々の会話やミーティングでも積極的に笑顔やポジティブな感情を共有します。
  • ストレス軽減のためのサポート:管理者がストレス軽減のためのサポートを行います。

エンゲージメント (Engagement)

  • 興味深いトレーニングプログラムの提供:職員が新しいスキルを習得し、専門知識を深めることを支援します。
  • 職員のスキルや能力を活かす仕事の創出:職員の強みを活かし存分に力が発揮できる仕事や役割を提供します。
  • フィードバックと評価制度の強化:フィードバックと評価のプロセスを改善し、職員が成長するための明確な基準を提示します。

他者との良好な関係 (Relationship)

  • チームビルディング活動:職員同士の信頼関係や連帯感を高めるために、チームビルディング活動を行います。
  • コミュニケーションスキルのトレーニング:効果的なコミュニケーションは、職員同士の相互理解を促進するため、スキルを向上させるトレーニングプログラムを提供します。
  • 相互サポートの文化を醸成:職員のストレスやプレッシャーに対処する手助けとなるため、職場内での相互サポートを推進します。

生きる意味や意義の自覚 (Meaning)

  • 職務の重要性を再確認:職員自身の仕事が組織や利用者にどのように影響を与えているかを再確認してもらい、モチベーションを高めます。
  • 職員の個人的な成長と発展のサポート:職員のスキルアップやキャリアパスのプランニングを支援し、自己実現をサポートします。
  • 自己成長目標の設定:自己成長の目標を設定し、それに向かって取り組むプロセスを確立します。

達成感 (Accomplishment)

  • 目標設定と達成のプロセスをサポート:職員が個人的な目標を設定し、それを達成するための計画をサポートします。
  • 職員の成果を認知し報酬を提供:成果を出した、目標を達成した職員を称えて、モチベーションを高めます。
  • キャリアの発展機会:職員がキャリアを発展させる機会を提供します。新しい役割や職務が行える機会を創出し、職員の成長を支援します。

利用者のウェルビーイングを向上するには

利用者のウェルビーイング向上のためのアイデアを紹介します。

ポジティブな感情 (Positive Emotion)

  • 毎日の感謝:利用者に毎日感謝の瞬間を見つける習慣を促します。例えば、おいしい食事を共にしたときなど、利用者と共有できる感謝の瞬間を探します。
  • 笑顔と明るい雰囲気の提供:スタッフや利用者が笑顔で接し、ポジティブな雰囲気を醸成します。会話や活動中に笑顔を絶やさないようにし、明るく楽しい雰囲気を作ります。
  • 好きな活動や趣味をサポート: 利用者が好きな活動や趣味を行うための支援をします。興味があることに関連するイベントを行い、彼らが楽しめる場を提供します。

エンゲージメント (Engagement)

  • 興味を引くアクティビティを提供:利用者の関心を引く様々なアクティビティを提供します。例えば、アート、料理教室、音楽演奏など、様々な選択肢を提供します。
  • 質問やディスカッション:利用者との質問やディスカッションを通じて、彼らの意見やアイデアを尊重します。興味深いトピックについて話し合う機会を作ります。
  • 能力や興味に合わせたプログラム:利用者の能力や興味に合わせたプログラムを提供します。

他者との良好な関係 (Relationship)

  • 交流できるイベントを計画し参加を促進:利用者同士やスタッフとの交流を促す機会を計画します。共通の活動を通じて、絆を深めます。
  • 様々なコミュニティ参加を支援:利用者が地域のコミュニティに参加できるよう支援します。例えば、地元のクラブやボランティア活動があるでしょう。
  • 職員との積極的なコミュニケーション:利用者と職員とのコミュニケーションを促します。個人的な関心やニーズを理解し、信頼関係を築くために時間を割きます。

生きる意味や意義の自覚 (Meaning)

  • ライフストーリーの共有:過去の経験や価値観を共有して、人生の意味を考える機会を提供します。
  • 新しいスキルの学習:利用者が新しいスキルを学ぶ機会を提供します。
  • 興味がある事柄についての活動を促進:利用者の興味がある事柄に関連する活動やプロジェクトを支援して、彼らが情熱を持って取り組める機会を提供します。

達成感 (Accomplishment)

  • 小さな目標の設定と達成を支援:小さな日常的な目標を設定し、それらを達成するプロセスをサポートします。
  • 成果を認知し、フィードバックを実施:利用者が達成したことに対してポジティブなフィードバックを提供します。
  • 新しい経験や挑戦の機会を提供:利用者に新しい経験や挑戦を楽しむ機会を提供します。例えば、新しいアクティビティに参加したり、旅行やアウトドアイベントに参加したりする機会を提供します。

これらの方法を実施することで、デイサービスの利用者と職員のウェルビーイングを向上させ、より良い環境とサポートを提供できるでしょう。

デイの質と成果向上のためウェルビーイングは重要

ウェルビーイングを向上させるためには、ポジティブ心理学の創設者であるセリグマン教授が提唱するPERMAモデルの要素を理解することが不可欠です。

デイサービスの利用者と職員のウェルビーイングが向上することは、サービス品質の向上や職員や利用者の満足度向上など、多くのメリットをもたらします。経営においても、高い満足度は評判の向上や新規利用者の増加に繋がり、経営に良い影響を与えることが期待できます。

デイサービスの成功には、ウェルビーイングの考え方と具体的な実践が不可欠です。ウェルビーイングに注目し、利用者と職員の幸福度向上に取り組んでいきましょう!

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この記事の著者

有限会社リハビリの風・施設部門管理責任者  阿部 洋輔

理学療法士、保健医療学修士。弟に脳性麻痺の障害があったことがきっかけで医療介護業界へ入る。一般病院、訪問リハビリ、デイサービスなどでの勤務を経て、現在は有限会社リハビリの風で施設部門の管理責任者として勤務。介護業界歴は10年以上で、運営している「介護業界で働く、理学療法士のブログ」にて施設のマネジャーやリーダー、介護が必要な家族を持つ方に向けて情報を発信している。

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