【理学療法士監修】転倒予防体操|高齢者のくり返す転倒を防ぐ効果的なトレーニング

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更新日:2024/04/05

高齢になるとさまざまな理由から転倒しやすくなり、足腰に不安を抱える人は繰り返し転倒する人も少なくありません。デイサービスをはじめとした施設では、たくさんの転倒予防トレーニングが提供されています。この記事では転倒予防体操のバリエーションを増やしたい方のために、転倒予防体操をたくさんご紹介しています。

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高齢者がくり返し転倒することの危険性

高齢になると、病気や筋肉低下がきっかけで転倒しやすくなります。なかには、繰り返し転倒してしまう方も少なくありません。転倒が繰り返されるとケガや骨折につながり、身体機能を低下させてしまう恐れがあります。

転倒によるケガがきっかけで寝たきり状態になると、筋萎縮や心機能低下などの症状を引き起こす廃用症候群を引き起こす恐れもあるでしょう。

このように、転倒は身体の衰えの悪循環を生み出すきっかけとなるのです。

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高齢者に効果的な転倒予防体操とは

高齢者の転倒を防ぐためには、体操を行って身体機能を維持することが大切です。体操を行うことで筋力が改善し、転倒の予防につながります。

デイサービスで転倒予防体操を行う際は、部位別にさまざまなバリエーションを取り入れておくと良いでしょう。日によってストレッチや筋トレなど、体操の内容を変えることで利用者も飽きずに行えるようになり、習慣化しやすくなります。

複合的な運動プログラムを組んで、利用者の転倒予防を目指していきましょう。

転倒予防体操【ストレッチ編】

転倒予防には筋力をつけるだけでなく、ストレッチで筋肉を伸ばすことも大切です。関節可動域が制限されると身体の動きが悪くなり、転倒を引き起こす可能性が高まります。

ストレッチで筋肉を伸ばして関節可動域を改善すれば、転倒のリスクを軽減できるでしょう。ここでは、転倒予防のストレッチの体操をご紹介します。

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肩まわりのストレッチ体操

  1. イスに座ってリラックスした姿勢になる
  2. 息を吸いながら両手を横に広げる
  3. 両手をできるだけ上げる
  4. 上げた両手を前方に下ろして、元に戻る
  5. 2〜4の手順を5セット繰り返す

両手を広げる際は、周囲の利用者にぶつからないように注意してください。肩を回すときは腕だけでなく、肩甲骨も大きく動かすようなイメージで行ってみましょう。肩の痛みがある方は、無理のない範囲で動かしてください。

首のストレッチ体操

  1. 頭を時計回り・反時計回りにゆっくりと回す
  2. それぞれ交互に3回×2セットずつ行う

首まわりのストレッチをすることで、振り向き動作を行いやすくなります。首のストレッチは座った状態で行っても問題ありません。首の痛みが出ない範囲で行ってみましょう。

足首のストレッチ体操

  1. イスに座り、タオルを用意する
  2. 膝を伸ばした片方の足裏にタオルを引っ掛ける
  3. 両手でタオルを引っ張り、その状態を20秒ほどキープする
  4. 反対の足で2〜3の手順を行う

ふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」をストレッチする体操です。余裕を持ってストレッチするために、なるべく長めのタオルを用意しておきましょう。ストレッチの最中は前方への転倒に注意してください。

股関節のストレッチ体操

  1. 立った状態で、前方にイスや手すりなどの支えになるものを用意する
  2. 姿勢をまっすぐにしながら片足を後方に引き、その状態を20秒ほどキープする
  3. 反対の足で2の手順を行う

股関節を曲げる働きのある「腸腰筋」のストレッチ方法です。ストレッチの際は、足を後ろに引いた側の股関節付け根の前側を伸ばすように意識してみてください。

そして足を後ろに引いた側の骨盤を前方に寄せるイメージで行ってみましょう。後ろに引いた足のかかとは浮いた状態にしてください。

膝関節のストレッチ体操

  1. イスに座る
  2. 片足の膝を伸ばす
  3. 膝を伸ばした足に向かって上半身を近づける
  4. 上半身を近づけた状態を20秒ほどキープする
  5. 2〜4の手順を反対の足で行う

膝裏の「ハムストリングス」をストレッチする方法です。イスに浅く座ってもらうと、ハムストリングスを伸ばしやすくなります。ストレッチ中は前方へ転倒しないように注意しましょう。

こちらの記事ではタオルを使ったタオルストレッチを紹介しています。寝たままの姿勢でできるものもたくさんありますので、こちらもあわせてご確認ください。
高齢者のタオルストレッチ|肩甲骨・背中・股関節に効く体操【全12種】

転倒予防体操【筋トレ編】

筋トレによって筋力を向上できれば、転倒予防につながります。筋トレをする際は、とくに下半身の筋肉を中心に行うことが大切です。

丈夫な下半身を作ることで、ふらつきやつまずきなどによる転倒の予防が期待できます。ここでは、下半身を中心とした筋トレについてご紹介します。

ふくらはぎの筋トレ体操

ここでは、座った状態と立った状態で行うふくらはぎの筋トレ体操をご紹介します。

座って行うふくらはぎの筋トレ体操

  1. イスに座って両手で両膝を下方向におさえる
  2. 手をおさえたまま、両かかとの上げ下げを20回×2〜3セット行う

ふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」を鍛えるトレーニングです。手をおさえることで、座った状態でも負荷をかけながら筋トレができます。膝の角度を90度にしておくことで、効率的に負荷をかけやすくなります。

立って行うふくらはぎの筋トレ体操

  1. 足を肩幅程度に広げて立つ
  2. 前にあるイスや手すりなどの支えになるものを持つ
  3. 可能な範囲でかかとを上げる
  4. ゆっくりと元に戻る
  5. 3〜4の手順を15回×2〜3セット行う

かかとを上げる際に重心が前に移動していると、下腿三頭筋に負荷がかかりにくくなります。なるべく真上にかかとを上げるイメージで行いましょう。

太ももの筋トレ体操

ここでは太ももを鍛える筋トレ体操をご紹介します。

足踏み体操

  1. イスに座り姿勢をまっすぐにする
  2. その場で足踏みをする
  3. 交互左右に20回×2〜3セット行う

太ももを上げる筋肉の「腸腰筋」を鍛えるトレーニングです。足踏み体操は、その他にも腕・体幹の筋肉やリズムを鍛えるトレーニングにもなります。足踏みをする際は、なるべく背もたれから背中を離して行いましょう。

膝を伸ばす筋トレ体操

  1. イスに座って姿勢をまっすぐにする
  2. 膝をできるだけ伸ばす
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を交互の足で20回2〜3セット行う

太もも前面の「大腿四頭筋」の筋肉を鍛えるトレーニングです。膝を伸ばす際は背もたれから背中を離しつつ、太ももを上げないように行いましょう。余裕がある方は、足首に重りを巻いて行ってみましょう。

足を前に踏み出す体操

  1. 立った状態で前にあるイスや手すりなどの支えのあるものを持つ
  2. 片足を前方へ踏み出し、膝を曲げながら体重を乗せる
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を交互の足で10回×2〜3セット行う

大腿四頭筋をはじめとした下半身の筋肉を鍛えられるトレーニングです。足を踏み込む際に前方の支えが邪魔になる場合は、身体を左右のどちらかに向きを変えて行ってみましょう。

左右に足を踏み出す筋トレ体操

  1. 立った状態で両足を肩幅よりも大きく広げる
  2. 片方の足に体重をかけてゆっくりと膝を曲げる
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を交互の足で10回×2〜3セット行う

大腿四頭筋やお尻の筋肉の「中殿筋」を鍛えるトレーニングです。ふらつきがみられる方は、近くに支えのあるものを用意しておくと転倒予防につながります。

お尻の筋トレ体操

ここではお尻の筋トレ体操についてご紹介します。

足を開く運動

  1. イスに座り、両膝にセラバンドを巻く
  2. 足は閉じたまま両膝を開く
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を20回×2〜3セット行う

中殿筋や股関節についている「大腿筋膜張筋」を鍛えるトレーニングです。なるべく左右均等に膝を開くことを意識して行いましょう。

お尻を上げる体操

  1. あお向けの状態になり、両膝を曲げてかかとを床につける
  2. お尻をできるだけ上げる
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を10回×2〜3セット行う

お尻の大きな筋肉である「大殿筋」を鍛えるトレーニングです。上半身と太ももが一直線になる状態になるまで、お尻を上げてみましょう。かかとだけ床につけた状態がきつい場合は、足全体をつけてもかまいません。

足の指の筋トレ体操

  1. イスに座って片方の足を伸ばす
  2. 伸ばした足の親指を伸ばしながら、人差し指から小指を曲げる
  3. 10回×2セット行ったあとは反対の足で同じ手順で行う

足の指まわりの筋肉を鍛えるトレーニングです。親指だけを伸ばすのが難しい場合は、すべての指を曲げて行っても問題ありません。こむら返りが起こらないように、あらかじめ指を軽く動かしておくと良いでしょう。

筋トレはバリエーションを増やし、飽きないようにするのが継続させるコツです。以下の記事の筋トレも徐々に追加していきましょう。
【理学療法士監修】下肢筋力トレーニング|高齢者が座位でできる筋力トレーニング22選

転倒予防体操【バランス体操編】

バランス能力の向上も、筋トレと同じように転倒予防として重要な要素です。バランス能力が高まることで、姿勢が安定しやすくなり、ふらつきや転倒を防げます。

ここでは、バランス能力を高めるための体操をご紹介します。

座位でバランス体操

ここでは座位でのバランス体操についてご紹介します。

骨盤を前後に動かす体操

  1. イスに座って姿勢をまっすぐにする
  2. 骨盤を前に倒すイメージでお腹を前にゆっくり突き出す
  3. 骨盤を後ろに倒すイメージで背中を丸める
  4. 2〜3の手順を10回×2〜3セット行う

骨盤を動かして腹部や背部の体幹筋を鍛えるトレーニングです。骨盤の動きを意識しながらゆっくり行ってみましょう。体操中はなるべく顔を前方に向けて行ってください。

体幹を側屈させる体操

  1. イスに座って両手を胸の前に組む
  2. 片方のお尻を浮かせながら、頭の位置を変えずに体幹を側屈する
  3. 元に戻り、反対側に同じ手順で側屈する
  4. 2〜3の手順を10回×2〜3セット行う

お腹の側方についている「腹斜筋」を鍛えるトレーニングです。側屈しすぎてバランスを崩さないように、無理のない範囲で行いましょう。

かかと上げのバランス体操

  1. 足を肩幅程度に広げて立つ
  2. 前にあるイスや手すりなどの支えになるものに軽く手を添える
  3. 可能な範囲でゆっくりとかかとを上げる
  4. ゆっくりと元に戻る
  5. 3〜4の手順を10回×2〜3セット行う

筋トレ編のふくらはぎの体操と同じ内容ですが、ここではバランス感覚を意識します。なるべく支えに軽く触れる程度にとどめ、バランスを保ちながら体操を行いましょう。

前方・側方リーチのバランス体操

ここではリーチに関するバランス体操をご紹介します。

座位での前方リーチの体操

  1. イスに座って両手を肩の高さまで上げる
  2. まっすぐの姿勢を保ったまま、できる限り上半身を前に倒す
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を10回×2〜3セット行う

体幹を鍛えて重心をコントロールするトレーニングです。体操中は手の位置を保ったまま行ってください。上半身を前に倒すのが不安な方は、杖をついた状態で行うのもおすすめです。

立位での前方リーチの体操

  1. 立った状態で両手を肩の高さまで上げる
  2. 可能な範囲まで手を前方に伸ばす
  3. ゆっくりと元に戻る

立位の状態で重心をコントロールする体操です。手の高さをなるべく変えないように伸ばしましょう。手を前方に伸ばす際は、お尻を後ろに突き出しすぎないようにしてください。

立位での側方リーチの体操

  1. 立った状態で片方の手を肩の高さまで横に広げる
  2. 広げた方向に向かって可能な範囲まで手を伸ばす
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 1〜3の手順を左右それぞれ5回×2〜3セット繰り返す

側方での重心移動をコントロールするトレーニングです。側方に手を伸ばす際は、足を浮かせないようにしてください。ふらつきやすい方は、足を広げることで安定感を高められます。

片足立ちのバランス体操

  1. 手すりや壁などの支えのある場所に立つ
  2. 片足を浮かして片足立ちの状態になる
  3. できる限りの時間キープしたら元に戻る
  4. 2〜3の手順で、左右の足でそれぞれ2〜3セット行う

片足立ちは難易度が高いバランス体操なので、転倒予防のために必ず支えのある場所で行いましょう。片足立ちが難しい場合は、まずは支えに軽く手を添えながら行ってみてください。

立位でのステップ体操

ここでは立位でのステップ体操についてご紹介します。

前後のステップ体操

  1. 立った状態で手すりに軽く手を添える
  2. 片足を前に踏み出し、体重を乗せる
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順をそれぞれの足で10回×2〜3セット行う

筋トレ編での足を前に踏み出す体操と類似した内容ですが、ここではバランス感覚を意識します。なるべく手すりに強くつかまらないようにして、自分の力でバランスをとるようにしましょう。

左右のステップ体操

  1. 手すりに軽く手を添えた状態で立ち、肩幅程度に足を広げる
  2. 片足を側方に踏み出して、体重を乗せる
  3. ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順をそれぞれの足で10回×2〜3セット行う

筋トレ編での左右に足を踏み出す体操と類似した内容ですが、ここではバランス感覚を意識します。体操中のふらつき具合に応じて、足を踏み出す距離を調整してみてください。

バランストレーニングもたくさんの種類があります。こちらの記事を参考にしてさまざまなトレーニングを楽しみましょう。
【理学療法士監修】器具なしでできるバランストレーニング|高齢者のバランス能力の維持・向上に役立つ運動17選

さまざまな体操を取り入れて転倒予防に努めよう

身体機能は年齢に応じて低下し、高齢者になると転倒の原因となるふらつきやつまずきなどの頻度が高まります。また、転倒によってケガや病気になると寝たきり状態となり、さらに身体機能が低下する悪循環につながる恐れがあります。

身体機能の低下を防ぎ、自分らしい生活を送るためには、体操を習慣的に行って転倒予防に努めることが大切です。転倒予防を目指すためには筋トレで筋力をつけるだけでなく、可動域やバランス能力の改善も重要です。

ぜひ今回の記事を参考にして、転倒予防のためのさまざまな体操を実践してみましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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