更衣介助(着替え介助)の手順と注意点|介護初心者向けマニュアル!

現場ノウハウ

介助

更新日:2025/02/26

更衣動作(着替え)は、朝や就寝時、入浴時など日常的に行われる動作です。加齢や病気によって寝たきりなどの介護状態になると身体が思うように動かなくなるため、着替えに介助が必要になります。そんな方々に対してスムーズに更衣介助(着替え介助)を行うためにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか?今回は、介護の基礎知識として更衣介助(着替え介助)の準備品や手順と注意点についてご紹介します。

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更衣介助(着替え介助)で準備するもの

私たちスタッフは、身体が思うように動かなくなった方々に対して着替えの介助(更衣介助)を行います。

その多くは寝たきりの方や介助が必要な方がほどんどです。そのような方々に負担をかけないように、着替えの介助を手際よくスムーズに行うためには事前の準備が重要となります。まずは、更衣介助で事前に準備するものをご紹介します。

【更衣介助で準備するもの】

  1. 着脱しやすい衣服を準備する
    衣類は、ご家族に着脱しやすいものを準備していただきましょう。麻痺や骨折により身体が拘縮(こうしゅく)していると関節が硬くなってしまうため着替えがしにくくなります。着脱しやすい服は以下のようなものがあります。
    ・前びらきのシャツ
    ・マジックテープのボタン
    ・伸縮性のある衣類
    ・脇から袖が広い衣類
  2. 下着を準備する
    着替えのタイミングで合わせて下着を着替える場合は以下のものを準備していきましょう。
    ・パンツ、肌着
    ・必要な方はオムツやパット
  3. 靴下を準備する
    朝方の着替えの場合は、靴下も合わせて準備しておきましょう。
  4. 塗り薬や貼り薬を準備する
    着替え介助は、衣類を脱ぐタイミングでもあります。医師から塗り薬や貼り薬が処方されている方は合わせて準備していきましょう。
    ・皮膚科などの塗り薬
    ・湿布などの貼り薬
  5. タオルケットやブランケットを準備する
    更衣介助(着替え介助)は、裸になる場合もあります。いくら介助を行うスタッフといえど裸になることは恥ずかしいことです。タオルケットやブランケットなど身体に掛けられるものを用意しておきましょう
    ・バスタオル
    ・タオルケット
    ・ブランケット

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更衣介助(着替え介助)の注意点とは

着替えの介助を行う場合に、特に注意していただきたい点について解説します。

  1. 室内の温度に注意する
    更衣介助(着替え介助)では、薄着になったり、裸になったりします。そのため冬場などは特に「室温の調整」を行なってから着替えるようにしましょう。
  2. プライバシーの配慮(自尊心を傷つけない)
    着替えは毎日のことですが肌着になることだけでも恥ずかしいことです。自尊心を傷つけないようにプライバシーに配慮しましょう。例えば、同性のスタッフが着替えの介助を行うように心がけたり、ブランケットをかけてあげるように意識しましょう。
  3. 転倒や転落に注意する
    座位バランスや耐久性が低下している方はベッドや椅子からのずり落ちに注意しましょう。ずり落ちが気になる方は、安定した椅子に座り直したり、肘掛けや背もたれ付きの椅子を準備するようにしましょう。
  4. 全て介助しない
    時間がないから、危ないからといって全て介助するのはやめましょう。また、急かすように無理に介助してしまうと関節を痛めてしまうなどの危険性も高まります。できるだけ自分の力で着替えができるように手を支えるような介助を心がけましょう。

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更衣介助(着替え介助)の手順を覚えよう!

更衣介助(着替え介助)の中でも、特に寝たきりの方の介助には苦労するのではないでしょうか?

寝たきりの方の更衣介助(着替え介助)を行う場合の手順について「上着の介助」と「ズボンの介助」のそれぞれを解説します。

更衣介助では、基本的にこの順番に沿って介助を行うようにしましょう。

寝たままの状態での上着の介助

  1. 衣類のボタンを外す
  2. 横向き(側臥位)にして、上になっている肩の衣服を外してから腕を脱がす
  3. 着替え用の服の上になっている腕に通す
  4. 着替え用の服を肩と背中にまで通す
  5. 仰向け(仰臥位)になり、汚れた服を反対の腕から外す
  6. 着替え用の服を反対の腕に通す
  7. 前身ごろを合わせてボタンをとめる
  8. 背中のシワやたるみを伸ばす

寝たままの状態でのズボンの介助

  1. 横向き(側臥位)にして、お尻の下までズボンを下ろす
  2. 仰向け(仰臥位)になり、ズボンを交互にズラしながら脱がす
  3. 仰向け(仰臥位)のまま、着替え用のズボンを足先に通す
  4. 左右交互に太ももまでズボンを上げる
  5. 横向き(側臥位)にして、片側のお尻までズボンを上げる
  6. 反対側に横向き(側臥位)になり、お尻までズボンを上げる
  7. お尻のズボンのシワやたるみを伸ばす

座った状態での介助

座った状態での更衣介助では、利用者の姿勢の安定を確保しながら、無理なく上着やズボンの着脱を行うことが重要です。特に体幹の支持が難しい方や、麻痺がある方の場合、バランスを崩さないように注意しながら進めましょう。

【上着の介助】

  1. 衣類のボタンを外す
  2. 健側(動かしやすい側)の袖を抜く
  3. 反対側の袖をゆっくりと抜く(麻痺がある場合は、肩から肘、手首の順に外す)
  4. 着替え用の服の患側(動かしにくい側)から袖を通す
  5. 着替え用の服を肩と背中まで通す
  6. 健側の腕に袖を通す
  7. 前身ごろを合わせてボタンを留める
  8. 背中のシワやたるみを伸ばす

【ズボンの介助】

  1. ズボンのボタンやファスナーを外す
  2. 左右交互に少しずつズボンをずらしながら膝まで下ろす
  3. 片足ずつ足首からズボンを抜く
  4. 着替え用のズボンの足先を通す
  5. 左右交互に膝、太ももまでズボンを引き上げる
  6. 利用者のバランスを確認しながら、お尻までズボンを引き上げる
  7. 立ち上がるか横向きになってもらい、ズボンをお尻までしっかり上げる
  8. お尻のシワやたるみを整え、ボタンやファスナーを留める

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スムーズな更衣介助(着替え介助)のコツ

更衣介助(着替え介助)は、利用者の身体機能や状態に合わせた方法で行うことが重要です。安全かつ快適に衣服を着脱できるように、適切な声かけやサポートを行いながら進めましょう。ここでは、スムーズな更衣介助のポイントを紹介します。

利用者の残存機能を活かす

利用者が自分でできる動作を尊重し、できるだけ自身で行ってもらうことで、自立度の維持・向上につながります。介助者は必要なサポートをしながら、利用者のペースに合わせて進めることが大切です。

負担を減らす衣類の選び方と工夫

着脱しやすい前開きの服や伸縮性のある素材を選ぶことで、スムーズな更衣が可能になります。また、ボタンやファスナーの位置が操作しやすいデザインかどうかも重要です。

声かけとコミュニケーションを意識する

利用者に安心してもらうために、「次は袖を通しますね」「足を少し上げてください」など、動作の前に声かけを行いましょう。また、利用者の反応を見ながら、無理のないペースで進めることが大切です。

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更衣介助の注意するポイント|① 服の着脱の順番

ここからは、更衣介助で注意する点について解説していきます。

更衣介助で注意するポイントの1つに『服の着脱の順番』があります。

着替えに介助が必要な方の多くは、身体が麻痺していたり、関節が拘縮(こうしゅく)したり痛みがあったりします。そのような場合に、片側の不自由な側を「患側(かんそく)」と呼び、問題ない側を「健側(けんそく)」と呼びます。この場合に着替えの介助をスムーズにするコツは、『脱ぐときは動きやすい健側から』『着る時は患側から』です。

例えば、右の手に麻痺がある場合は、まず衣服を脱がせる時に左側(健側)の肩から手にかけてゆっくりと脱がしていきます。左側の袖を脱いだら、次に右側(麻痺側)の肩から手を脱がしていきます。

衣類を着るときは、まず右側(麻痺側)から袖を通していきます。その上で左側(健側)から手を通していきます。

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更衣介助の注意するポイント|② 介助する箇所

次に、更衣介助で注意するポイントに『介助する箇所』があります。

麻痺や関節の拘縮(こうしゅく)、痛みがある手足を持ったり、引っ張るように介助をしてしまうと関節を痛みてしまう可能性があります。

着替えの介助を行い場合は、肘や手首などの関節を支えるように介助するようにしましょう。ただし、肘や手首などの骨折により手足の関節を動かすことを禁止されている場合は、関節を持つことは控えましょう。

何より着替えにより痛みがない範囲で、ゆっくりと着替えの介助を行うようにしましょう。

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更衣介助の注意するポイント|③ プライバシー

次に、更衣介助で注意するポイントに『プライバシーへの配慮』があります。

着替えは、上着やズボンだけでなく肌着や下着などの介助も行います。いくらご高齢者だからといって下の世話をされることは恥じらいがあることです。

カーテンなどでプライバシー保護に努めたり、露出を減らすためにタオルケットを掛けたり、ズボンと上着をそれぞれ順番に行うようにしたりするなど配慮を行いましょう。できることなら、女性のご利用者様であれば女性スタッフが、男性のご利用者様であれば男性スタッフが着替えの介助をするなど同性のスタッフが対応するようにしましょう。

更衣介助の注意するポイント|④ 皮膚状態

更衣介助は、全身の皮膚状態を観察できる機会でもあります。特に、皮膚が脆弱(ぜいじゃく)なご高齢者の場合は、着替えを行うタイミングで『皮膚の状態をチェック』しておきましょう。

【更衣介助での皮膚状態の観察項目】

  • 手や顔、足がカサカサしていないか
  • 手の甲や、腕、足に内出血(あざ)がないか
  • 皮膚が剥がれていないか
  • お尻や背中に褥瘡(じょくそう)がないか
  • 皮膚に痛みや赤みがないか

褥瘡がある場合は、背中やお尻の衣類にシワがよらないように注意しておきましょう。また、合わせて処方されている塗り薬や貼り薬を交換するのも良いでしょう。

皮膚状態の悪化だけではありませんが、早期発見と早期治療が重要です。そのためには、日頃から着替えの介助を行うスタッフが、対象者の変化に気付けるかが重要なポイントになってくるのではないでしょうか?

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まとめ

今回ご紹介したように、着替え(更衣介助)をスムーズに手際よく介助するためには、「事前の準備」と「介助の手順」を理解しておくことが重要となります。

さらに、介助する箇所と皮膚の状態も確認でき、プライバシーも配慮できるスタッフであれば利用者様も安心して着替えを任せることができるのではないでしょうか?

介護・介助の技術は現場の経験値だけでなく、事前に知識を蓄えておくことも重要です。介護のスペシャリストとしての第一歩として参考になれば幸いです。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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