廃止になった運動器機能向上加算の体力測定方法と計画書の作り方【廃止に伴う対応策も紹介】

介護保険法

その他の加算

更新日:2024/11/05

フレイル対策や健康寿命の延伸を目指す運動器機能向上加算は、令和6年度の介護報酬改定で廃止になりました。この記事では、廃止に伴う対応策について解説します。また、算定する際に必要な体力測定の方法や、計画書の作成方法、プログラムを具体的にご紹介します

※運動器機能向上加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています。

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運動器機能向上加算は廃止

令和6年度介護報酬改定により、運動器機能向上加算は廃止されました。今回の介護報酬改定以前は、運動器機能向上加算、栄養改善加算、口腔機能向上加算のうち2種類もしくは3種類のサービスを実施することで「選択的サービス複数実施加算(Ⅰ)(または(Ⅱ))」を算定することが可能でした。

今回の運動器機能向上加算の廃止に伴い、栄養改善加算口腔機能向上加算のいずれも実施することで算定が可能な「一体的サービス複数実施加算」を取得していくことが経営上好ましいでしょう。

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売上減への対応、補填するのにおすすめの加算

運動器機能向上加算が廃止されたことにより、利用者1人あたり月225単位分の減収となります。その減収を補填するための候補として、以下の3つの加算が挙げられます。

一体的サービス複数実施加算

もともと、運動器機能・栄養・口腔機能を向上させる複数のサービスを提供することで算定できる選択的サービス複数実施加算がありました。2024年度の介護報酬改定で、運動器機能向上加算が廃止されたことにより、栄養改善サービスと口腔機能向上サービスを行うことで、一体的サービス加算(月480単位)が算定できるようになりました。

▶︎一体的サービス提供加算とは?単位数と算定要件などを解説

口腔機能向上加算

口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している、または低下するおそれのある利用者を対象にした加算です。口腔機能の改善のための取り組みを評価することで算定可能となります。

口腔機能向上加算(Ⅰ)は、

  • 要支援者:150単位(1回/月あたり)
  • 要介護者:150単位(2回/月まで)

と算定することができます。

また、LIFEへの情報提供をすることで算定できる口腔機能向上加算(Ⅱ)は、

  • 要支援者:160単位(1回/月あたり)
  • 要介護者:160単位(2回/月まで)

となっています。

▶︎口腔機能向上加算とは?(Ⅰ)(Ⅱ)の違いと算定要件

科学的介護推進体制加算

科学的介護推進体制加算は、自立支援・重度化防止を目的とした、科学的に裏付けられた介護サービスを推進するための加算です。必要な利用者情報をLIFEに入力することが必要となります。科学的介護推進体制加算は、月40単位算定することが可能です。

▶︎科学的介護推進体制加算の算定要件がまるわかり!LIFEへの提出方法も解説

運動器機能向上加算の単位数と算定要件

運動器機能向上加算は要件が満たせる状況で、管轄の保険者に届出を提出することで取得が可能になります。
以下で詳しく解説しますのでご参考ください。

単位数

運動機能向上加算は1人あたり「225単位/月」の算定が可能です。対象者は要支援の認定を受けた方、もしくは総合事業対象者になります。

運動器機能向上加算 225単位

注 次に掲げるいずれの基準にも適合しているものとして市町村長に届け出て、利用者の運動器の機能向上を目的として個別的に実施される機能訓練であって、利用者の心身の状態の維持又は向上に資すると認められるもの(以下「運動器機能向上サービス」という。)を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。

引用:介護保険法施行規則第百四十条の六十三の二第一項第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年厚生労働省告示第72号)

算定要件

運動機能向上加算の算定要件の取り扱いについては、厚生労働省老健局より以下の点に留意するよう情報が発表されています。

運動器機能向上加算の取り扱いについて
目的

通所型サービスにおいて運動器機能向上サービスを提供する目的は、当該サー ビスを通じて要支援者等ができる限り要介護状態等にならず自立した日常生活を 営むことができるよう支援することであることに留意しつつ行うこと。

配置基準

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサ ージ指圧師、はり師又はきゅう師(はり師及びきゅう師については、理学療法 士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧 師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上機能訓練指導に従 事した経験を有する者に限る。)(以下「理学療法士等」という。)を1名以上配置して行うものであること。

サービス提供

運動器機能向上サービスについては、以下のアからキまでに掲げるとおり、実施すること。 
ア 利用者ごとに看護職員等の医療従事者による運動器機能向上サービスの実施に当たってのリスク評価、体力測定等を実施し、サービスの提供に際して考慮 すべきリスク、利用者のニーズ及び運動器の機能の状況を、利用開始時に把握すること。
イ 理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するためのおおむね3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という。)及び長期目標を達成 するためのおおむね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という。) を設定すること。長期目標及び短期目標については、地域包括支援センター等 において作成された当該利用者に係るケアプラン等と整合が図れたものとすること。 
ウ 利用者に係る長期目標及び短期目標を踏まえ、理学療法士等、看護職員、介 護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、当該利用者ごとに、実施する運動の種類、実施期間、実施頻度、1回当たりの実施時間、実施形態等を記 載した運動器機能向上計画を作成すること。その際、実施期間については、運動の種類によって異なるものの、おおむね3月間程度とすること。また、作成 した運動器機能向上計画については、運動器機能向上サービスの提供による効果、リスク、緊急時の対応等と併せて、当該運動器機能向上計画の対象となる 利用者に分かりやすい形で説明し、その同意を得ること。なお、通所型サービ スにおいては、運動器機能向上計画に相当する内容を通所型サービス計画の中 に記載する場合は、その記載をもって運動器機能向上計画の作成に代えることができるものとすること。 
エ 運動器機能向上計画に基づき、利用者ごとに運動器機能向上サービスを提供すること。その際、提供する運動器機能向上サービスについては、国内外の文献等において介護予防の観点からの有効性が確認されている等の適切なものと すること。また、運動器機能向上計画に実施上の問題点(運動の種類の変更の 必要性、実施頻度の変更の必要性等)があれば直ちに当該計画を修正するこ と。
オ 利用者の短期目標に応じて、おおむね1月間ごとに、利用者の当該短期目標の達成度と客観的な運動器の機能の状況についてモニタリングを行うととも に、必要に応じて、運動器機能向上計画の修正を行うこと。
カ 運動器機能向上計画に定める実施期間終了後に、利用者ごとに、長期目標の 達成度及び運動器の機能の状況について、事後アセスメントを実施し、その結 果を当該利用者に係る地域包括支援センター等に報告すること。地域包括支援 センター等による当該報告も踏まえた介護予防ケアマネジメントの結果、運動器機能向上サービスの継続が必要であるとの判断がなされる場合については、 前記アからカまでの流れにより、継続的に運動器機能向上サービスを提供する。
キ 旧基準省令第 107 条において準用する第 19 条において規定するサービスの 提供の記録において利用者ごとの運動器機能向上計画に従い、理学療法士等、 経験のある介護職員その他の職種の者が、利用者の運動器の機能を定期的に記録する場合は、当該記録とは別に運動器機能向上加算の算定のために利用者の運動器の機能を定期的に記録する必要はないものとすること。

参考:介護保険法施行規則第 140 条の 63 の2第1項第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準の制定に伴う実施上の留意事項について

また、要支援者の介護予防を目的とした運動器機能向上加算は市区町村が管轄しているため、地域によって要件が異なる可能性があります。よって、さらに詳しいことは各市区町村に確認する必要があるでしょう。

以下に、熊本県熊本市が発表している算定基準の情報を載せますのでご参考ください。

運動器機能向上加算の算定基準
概要

理学療法士等を中心に看護職員、介護職員等が共同して利用者の運動器機能向上に係る個別の計画 を作成し、これに基づく適切なサービスの実施、定期的な評価と計画の見直し等の一連のプロセス を実施した場合に加算する。

配置基準

理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を1名以上配置していること。

計画書

利用者の運動器の機能を利用開始時に把握し、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護 職員、介護職員その他の職種の者が共同して、運動器機能向上計画を作成していること。
利用者ごとの運動器機能向上計画に従い医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は 言語聴覚士若しくは看護職員が運動器機能向上サービスを行っているとともに、利用者の運動器の機能を定期的に記録していること。
利用者ごとの運動器機能向上計画の進捗状況を定期的に評価していること。

運営基準

別に厚生労働大臣の定める基準に適合している指定介護予防通所リハビリテーション事業所であること。 
厚生労働大臣が定める基準(平成12年厚生省告示第25号)第107号 通所介護費等算定方法第15号及び第16号に規定する基準のいずれにも該当しないこと。 = 定員超過、人員欠如がない事業所であること。

参考:第一号通所事業(介護予防・日常生活支援総合事業) の手引き

もっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

▶︎初心者でもわかる運動器機能向上加算【総論】

運動器機能向上加算に向けた体力の測定方法

この章では、運動器機能向上加算に必要な体力の評価方法について解説します。

運動器機能向上加算の算定を開始する時には、看護職員等の医療従事者による評価が必要になります。サービスを提供する際に考慮するべきリスクや利用者のニーズ、身体機能などの状況を把握しなければなりません。

また、評価は継続して加算を算定する際にも行う必要があります。定期的にモニタリングを行い、必要に応じて運動器機能向上計画の修正を行います。

体力測定は運動器機能向上加算の算定前だけ行えば良いものではありません。計画実施後にも必要であり、加算の算定を継続するのであれば3ヵ月に1回の実施が必須となります。

身体機能評価の項目には、握力測定や5m歩行テストなどが挙げられます。

運動器機能向上加算における評価項目についての指定は特にありません。ただし、以下のような要素を重視して評価項目を選定することが大切になります。

  • 安全性が高い
  • 負担が少ない
  • 判断基準が明確
  • 評価が簡単
  • 短時間で評価が実施できる

対象者本人の負担や評価対象者の数などを考慮し、上記の要素を踏まえた評価項目を選ぶようにしましょう。

以下は体力測定の項目例です。1つずつ解説しますのでご参考ください。

握力測定:全身の筋力 
立ち座りテスト:下半身の筋力
長座体前屈:身体の柔軟性 
開眼片脚立ちテスト:立位バランス
Timed up & Go Test/ TUG:動的バランス 
Functional Reach Test/ FRT:立位・座位バランス
5m歩行テスト:歩行能力

握力測定

[準備するもの]

  • 握力計

[測定方法]

  1. 両足を広げて、腕を真っ直ぐ下ろします。
  2. 握力計を握る位置を人差し指の第2関節が直角になるように調整してください。
  3. 息を吐きながら、全力で握ります。
  4. 左右の手でそれぞれ2回ずつ行い、両手の最大値を記録します。

[注意点]

  • 人差し指の第2関節が直角(90度)になるようにする。
  • 座位で行った場合は備考欄に記載してください。
  • 握力計を握った際に体が傾いたり、膝が曲がらないように注意してください。
  • 握力計が体に密着したり、極端に離れたりしないようにしてください。

[アドバイス]

  • 計測前に声かけを行ってください。「フーッと息を吐きながら、腕を身体につけずに、しっかりと手を握ってください。」といった分かりやすい指示を出してください。
  • 計測中にも声かけを行ってください。「もっともっと力一杯握ってください」といった力の入るような声かけをしてください。

握力の平均値について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎握力の平均値|男性・女性の平均値と握力測定のポイント

立ち座りテスト

[準備するもの]

  • タイマー(ストップウォッチ)
  • 椅子

[測定方法]

  1. 椅子に浅く座り、両腕を組みます。
  2. 両足を肩幅に開いて、足の裏を床につけます。
  3. タイマーを30秒に設定し、椅子から立ち座りを何回行えるかを数えます。
  4. 30秒の間に立ち上がれた回数を記録します。

[注意点]

  • 勢いよく座ると腰を痛める可能性があるため、注意してください。
  • 立ち上がる時は手の力を使わないようにしてください。
  • 立ち上がった時はできるだけ膝と腰を伸ばすようにしてください。
  • 無理をすると転倒する可能性があるため、注意してください。

[アドバイス]

  • 計測前に次のような声かけを行ってください。「30秒の間にできるだけ速く立ち座りを繰り返してください。痛みを感じたら無理をせずに止めてください」

 長座体前屈

[準備するもの]

  • メジャー
  • 段ボール(長座体前屈測定器用)
  • 目印用テープ

[測定方法]

  1. 両足を段ボールの下の空間に入れて足を伸ばします。
  2. 壁に背中とお尻を密着させ、背筋を伸ばします。
  3. 胸を張り、肩幅の広さを保ったまま両手を測定台に置きます。両肘は伸ばしたままにしてください。
  4. 息を吐きながら、できるだけ前方に手を押し出します。
  5. 最大限前屈した後、手を測定台から離します。
  6. 測定開始の位置から測定台が離れた距離を計り、記録します。

[注意点]

  • 膝を曲げずに行ってください。
  • 測定器具を指で押し込まないように注意してください。
  • 途中で指を離さないように注意してください。
  • 反動を付けるなどして勢いをつけないでください。
  • 真っ直ぐに測定台を押すようにしてください。
  • 痛みを感じた時は無理をせず、中止してください。

[アドバイス]

  • 測定前に次のような声かけを行ってください。「息を吐きながら、できる限り前方に手を伸ばしてください」といったように、分かりやすく指示してください。

開眼片脚立ちテスト

[準備するもの]

  • ストップウォッチ

[測定方法]

  1. 両手を腰にあてます。
  2. 片足が床から5cm以上離れた時点から計測を開始します。以下の状態が生じた場合、測定を終了します。
    • 軸足の位置がずれた時
    • 軸足以外の体の一部が床に触れた時
    • 腰にあてた手が離れた時
  3. 左右それぞれ2回ずつ測定し、最大値を記録します。

[注意点]

  • 足を上げる方向は、前方または後方どちらでも構いませんが、上げた足を軸足につけないように注意してください。
  • 小数点以下の数値は切り捨てます。測定時間の最長は60秒です。60秒できた場合でも、2回目の測定を行ってください。
  • 転倒する可能性があるため、注意してください。

[アドバイス]

  • 測定前に次のような声かけを行ってください。「目を開けたまま、床から足を浮かせた状態をなるべく長く保ってください。後ろにいる人が転倒予防のサポートをしますので安心してください。」といったように、分かりやすく指示してください。

 Timed up & Go Test/ TUG

[準備するもの]

  • ストップウォッチ
  • 椅子
  • 目印(コーン)
  • メジャー

[測定方法]

  1. 椅子に深く座り、手は太ももに置きます。
  2. 身体や頭の一部が動いた時から計測を開始します。
  3. 3m先の目印まで歩き、折り返して椅子にお尻が触れたら計測を終了します。
  4. 通常歩行と最速歩行をそれぞれ1回ずつ測定して記録します。

[注意点]

  • 回り方は左右どちらからでも構いません。
  • 杖などの歩行補助具を使用している場合は、そのまま使用してください。
  • 転倒の危険があるため、必ず利用者の後ろまたは横から補助してください。

[アドバイス]

  • 計測前に次のような声かけを行いましょう。通常歩行の場合は「いつもの歩く速さで歩いてください」、最速歩行の場合は「走らないように、できるだけ速く歩いてください」といったように、分かりやすく指示してください。

初めて評価する方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎TUGテストのカットオフ値とは|初めて評価する方のための基礎知識と測定方法

Functional Reach Test/ FRT

[準備するもの] 

  • メジャー
  • 目印用テープ

[測定方法]

  1. 壁に対して横向きに立ち、片腕を肩の高さまで上げます。
  2. 中指の位置を開始位置として、壁にテープで記録します。
  3. 体を前に倒しながら、上げた腕をまっすぐ前へ移動させます。
  4. 最大限に手を伸ばし、中指の位置を終了位置としてテープで記録します。
  5. 開始位置と終了位置の差を測定します。
  6. 測定は2回行い、大きい方の値を記録します。

[注意点]

  • 手を伸ばす際に背中を丸めたり、腕を下げたりしないように注意してください。
  • 体と壁が触れないようにしてください。
  • 座位の場合は背もたれに寄りかからないように意識してください。
  • 転倒する可能性があるため、注意してください。

[アドバイス]

  • 計測前に次のように声かけをしてください。「前ならえの状態から、最大限前に手を伸ばしてください」といったように伝えてください。

FRTの目的や評価方法などについてさらに知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎ファンクショナルリーチテスト(FRT)の目的と評価方法・カットオフ値について

 5m歩行テスト

[準備するもの] 

  • ストップウォッチ
  • テープ
  • メジャー

[測定方法]

  1. 歩き始める位置から3mと8mの地点に目印のテープを貼ります。計測区間は合計11mにおける3m〜8m間の5mの範囲です。
  2. 計測開始位置の3m前から歩き始め、開始地点のテープをつま先が越えた時点から計測します。
  3. 終了位置をつま先が越えるまでに要した時間を測定します。
  4. 測定は通常歩行と最速歩行をそれぞれ1回ずつ行い、記録します。

[注意点]

  • 測定中は走らないようにしてください。
  • 杖などの歩行補助具を使用する場合は、備考欄に記載してください。
  • 転倒する可能性があるため、注意してください。

[アドバイス]

  • 計測前に声かけを行ってください。通常歩行の場合「いつものように歩いてください」、最速歩行の場合「走らないようにできるだけ速く歩いてください」といったように分かりやすく指示してください。

5m歩行テストの評価方法やカットオフ値などについてさらに知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎5m歩行テストの評価方法・カットオフ値|高齢者の身体能力評価について解説

運動器機能向上加算の計画書の作り方

以下に運動器機能向上加算の計画書の作り方について解説します。具体的に計画書を載せた上で、具体例を挙げながら説明しますので、ぜひご参考ください。

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利用者基本情報

利用者基本情報は、介護サービスを受けるための基本的な情報のことを指します。情報は、利用者本人やその家族から提供されます。

基本情報については、直接利用者に聞いて記載することもできますが、まずは既に得られている情報を確認して記載するのが良いでしょう。

以下の書類を参考にするとスムーズに利用者基本情報に記入することができます。

長期・短期目標の設定

運動器機能向上加算の計画書には、長期目標と短期目標を設定しなければなりません。また、ケアプラン等と整合性のある目標を立てる必要があります。これらは、定期的な評価や計画の見直しを行い、適切なサービスの実施をするために必要になります。

厚生労働省老健局からも運動器機能向上加算の取り扱いについて、以下のように発表されています。

理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するためのおおむね3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という。)及び長期目標を達成 するためのおおむね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という。)を設定すること。長期目標及び短期目標については、地域包括支援センター等 において作成された当該利用者に係るケアプラン等と整合が図れたものとすること。

引用:介護保険法施行規則第 140 条の 63 の2第1項第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準の制定に伴う実施上の留意事項について

ケアプランとの整合性を図り、プログラム内容を決める必要性は、加算要件に必要という面だけでは語れません。

明確な目標や生活課題を設定することによって、解決するべきことを見据えて運動プログラムを組めます。

具体例については以下をご参照ください。

ニーズの実現のために、概ね 3 ヵ月程度で到達できる長期目標の例

例 1 買い物ができるようになるために、歩行能力の向上を図る。

例 2 炊事が楽にできるようになるために、機能的なバランス能力の向上を図る。

例 3 物干しが楽にできるようになるために、立位での機能的な動作能力の向上を図る。

目標達成のために、概ね1ヵ月程度で到着できる短期目標の例

1ヵ月目 歩行能力を高めるための運動に必要な基本動作が自立して行える。

2ヵ月目 家の近所の散歩が楽にできる。

3ヵ月目 30 分間程度の散歩ができる。階段1階分を楽に昇降できる。

プログラム内容・実施頻度・時間

利用者の目標やニーズに基づき、理学療法士・看護職員・介護職員・生活相談員などが協力し、各利用者ごとに以下の項目を記入します。

  • 実施する運動の種類
  • 実施期間
  • 実施頻度
  • 1回あたりの実施時間
  • 実施形態

実施期間は運動の種類によって異なりますが、一般的にはおおよそ3ヵ月程度とされています。この3ヵ月は、コンディショニング期間(第1期)、筋力向上期間(第2期)、機能的運動期間(第3期)に分けられます。

運動器機能向上のサービス提供についての同意

作成した運動器機能向上計画は、利用者が理解しやすいように説明しましょう。効果やリスク、緊急時の対応などと共に説明し、利用者の同意を得ます。

介護予防通所介護または介護予防通所リハビリテーションでは、運動器機能向上計画に相当する内容を介護予防通所介護計画や介護予防通所リハビリテーション計画に記載することで、運動器機能向上計画の作成を代替できるとされています。

運動器機能向上のプログラムについて

日常生活動作能力の向上のためには、立つ・座る・歩く・階段昇降などの日常の活動に必要な筋肉群を中心に運動します。また、転倒予防のためには、抗重力筋群に対抗する筋肉や体幹を安定させる腹筋も重要です。尿失禁予防の場合には、骨盤底筋群も対象になることがあるでしょう。

その他の運動プログラム事例については、厚生労働省作成の介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)「資料3-3 運動プログラム事例 プログラム事例(例:機能的運動期)」などをご参考にどうぞ。

また、Rehab Cloudのサイト内では、もっとたくさんの運動バリエーションを紹介しています。

▶︎【完全保存版】デイサービス・機能訓練指導員が活用できる高齢者のためのリハビリ体操・運動まとめ

運営(実地)指導に備えプロセスをチェック

目標

  • 機能の向上を目的としたプログラムになっているか
  • 個別の課題を把握したプログラムになっているか
  • 期待される生活機能の改善が明確となっているか

安全管理

  • 実施前のバイタルサインのチェックは行っているか
  • 実施中に水分補給の時間を設けているか
  • 実施後のバイタルサインのチェックは行っているか

評価

  • 痛みを評価しているか
  • 定期的(事前・事後)な運動機能の計測がなされているか
  • 定期的な健康関連QOLの測定がなされているか
  • 評価を基に個別の課題を把握しているか

方法

  • 骨折予防及び膝痛・腰痛対策のための個別プログラムが検討されているか
  • 運動器の機能向上に関する知識の提供を行っているか
  • 筋力向上運動を行っているか
  • プログラムの内容、実施頻度、各種目の回数が明確となっているか
  • 実施時間は1時間以上行っているか

フォローアップ

  • 脱落者は少ないか
  • 自主グループ化を試みているか
  • プログラム参加後の活動状況を定期的に把握しているか

運営指導対策について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎デイサービスの運営指導(旧 実地指導)対策 |確認項目・記録書類・マニュアルなどを紹介

運動器機能向上プログラムでフレイル予防

運動器機能向上プログラムを行うことは、フレイル予防に一役買います。プログラムを行う際の流れは以下の通りです。

  1. 専門家による評価: 理学療法士による運動機能や身体機能の評価を受けます。
  2. 機能向上プログラムの設定: 評価結果に基づいて、個別の運動プログラムを設定します。筋力トレーニングやバランス練習など、適切なエクササイズを選択します。
  3. 定期的な実施とモニタリング: 設定された機能向上プログラムを定期的に実施し、進捗をモニタリングします。プログラムの適応性や効果を確認し、必要に応じて調整を行います。
  4. 日常生活への適用: 運動プログラムの効果を日常生活に活かし、身体機能や運動能力の向上を促します。これにより、フレイルのリスクを軽減することが期待されます。

運動器機能向上加算は、個別の評価と運動プログラム設定に基づいて行います。フレイル予防をするのであれば、それに見合った計画を立てる必要があるでしょう。

フレイルは日々の活動量を増加させるといった、簡単で低負荷な運動支援でも有用となる可能性があります。個々の対象者の状況に合わせた上でフレイル予防が適切に行えるように意識して計画書を作成しましょう。

※運動器機能向上加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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