口腔機能向上加算とは|(Ⅰ)(Ⅱ)の違い・算定要件・計画書について
介護保険法
2024/10/09
介護保険法
その他の加算
更新日:2024/09/19
フレイル対策や健康寿命の延伸を目指す運動器機能向上加算は、令和6年度の介護報酬改定で廃止になりました。この記事では、廃止に伴う対応策について解説します。また、算定する際に必要な体力測定の方法や、計画書の作成方法、プログラムを具体的にご紹介します
この記事の目次
※運動器機能向上加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています。
令和6年度介護報酬改定により、運動器機能向上加算は廃止されました。今回の介護報酬改定以前は、運動器機能向上加算、栄養改善加算、口腔機能向上加算のうち2種類もしくは3種類のサービスを実施することで「選択的サービス複数実施加算(Ⅰ)(または(Ⅱ))」を算定することが可能でした。
今回の運動器機能向上加算の廃止に伴い、栄養改善加算、口腔機能向上加算のいずれも実施することで算定が可能な「一体的サービス複数実施加算」を取得していくことが経営上好ましいでしょう。
運動器機能向上加算が廃止されたことにより、利用者1人あたり月225単位分の減収となります。その減収を補填するための候補として、以下の3つの加算が挙げられます。
もともと、運動器機能・栄養・口腔機能を向上させる複数のサービスを提供することで算定できる選択的サービス複数実施加算がありました。2024年度の介護報酬改定で、運動器機能向上加算が廃止されたことにより、栄養改善サービスと口腔機能向上サービスを行うことで、一体的サービス加算(月480単位)が算定できるようになりました。
口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している、または低下するおそれのある利用者を対象にした加算です。口腔機能の改善のための取り組みを評価することで算定可能となります。
口腔機能向上加算(Ⅰ)は、
と算定することができます。
また、LIFEへの情報提供をすることで算定できる口腔機能向上加算(Ⅱ)は、
となっています。
科学的介護推進体制加算は、自立支援・重度化防止を目的とした、科学的に裏付けられた介護サービスを推進するための加算です。必要な利用者情報をLIFEに入力することが必要となります。科学的介護推進体制加算は、月40単位算定することが可能です。
▶︎科学的介護推進体制加算の算定要件がまるわかり!LIFEへの提出方法も解説
運動器機能向上加算は要件が満たせる状況で、管轄の保険者に届出を提出することで取得が可能になります。
以下で詳しく解説しますのでご参考ください。
運動機能向上加算は1人あたり「225単位/月」の算定が可能です。対象者は要支援の認定を受けた方、もしくは総合事業対象者になります。
運動器機能向上加算 225単位
注 次に掲げるいずれの基準にも適合しているものとして市町村長に届け出て、利用者の運動器の機能向上を目的として個別的に実施される機能訓練であって、利用者の心身の状態の維持又は向上に資すると認められるもの(以下「運動器機能向上サービス」という。)を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。
引用:介護保険法施行規則第百四十条の六十三の二第一項第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年厚生労働省告示第72号)
運動機能向上加算の算定要件の取り扱いについては、厚生労働省老健局より以下の点に留意するよう情報が発表されています。
運動器機能向上加算の取り扱いについて | |||
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目的 |
通所型サービスにおいて運動器機能向上サービスを提供する目的は、当該サー ビスを通じて要支援者等ができる限り要介護状態等にならず自立した日常生活を 営むことができるよう支援することであることに留意しつつ行うこと。 |
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配置基準 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサ ージ指圧師、はり師又はきゅう師(はり師及びきゅう師については、理学療法 士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧 師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上機能訓練指導に従 事した経験を有する者に限る。)(以下「理学療法士等」という。)を1名以上配置して行うものであること。 |
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サービス提供 |
運動器機能向上サービスについては、以下のアからキまでに掲げるとおり、実施すること。 |
参考:介護保険法施行規則第 140 条の 63 の2第1項第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準の制定に伴う実施上の留意事項について
また、要支援者の介護予防を目的とした運動器機能向上加算は市区町村が管轄しているため、地域によって要件が異なる可能性があります。よって、さらに詳しいことは各市区町村に確認する必要があるでしょう。
以下に、熊本県熊本市が発表している算定基準の情報を載せますのでご参考ください。
運動器機能向上加算の算定基準 | |||
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概要 |
理学療法士等を中心に看護職員、介護職員等が共同して利用者の運動器機能向上に係る個別の計画 を作成し、これに基づく適切なサービスの実施、定期的な評価と計画の見直し等の一連のプロセス を実施した場合に加算する。 |
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配置基準 |
理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を1名以上配置していること。 |
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計画書 |
利用者の運動器の機能を利用開始時に把握し、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護 職員、介護職員その他の職種の者が共同して、運動器機能向上計画を作成していること。 |
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運営基準 |
別に厚生労働大臣の定める基準に適合している指定介護予防通所リハビリテーション事業所であること。 |
参考:第一号通所事業(介護予防・日常生活支援総合事業) の手引き
もっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
この章では、運動器機能向上加算に必要な体力の評価方法について解説します。
運動器機能向上加算の算定を開始する時には、看護職員等の医療従事者による評価が必要になります。サービスを提供する際に考慮するべきリスクや利用者のニーズ、身体機能などの状況を把握しなければなりません。
また、評価は継続して加算を算定する際にも行う必要があります。定期的にモニタリングを行い、必要に応じて運動器機能向上計画の修正を行います。
体力測定は運動器機能向上加算の算定前だけ行えば良いものではありません。計画実施後にも必要であり、加算の算定を継続するのであれば3ヵ月に1回の実施が必須となります。
身体機能評価の項目には、握力測定や5m歩行テストなどが挙げられます。
運動器機能向上加算における評価項目についての指定は特にありません。ただし、以下のような要素を重視して評価項目を選定することが大切になります。
対象者本人の負担や評価対象者の数などを考慮し、上記の要素を踏まえた評価項目を選ぶようにしましょう。
以下は体力測定の項目例です。1つずつ解説しますのでご参考ください。
握力測定:全身の筋力
立ち座りテスト:下半身の筋力
長座体前屈:身体の柔軟性
開眼片脚立ちテスト:立位バランス
Timed up & Go Test/ TUG:動的バランス
Functional Reach Test/ FRT:立位・座位バランス
5m歩行テスト:歩行能力
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
握力の平均値について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎握力の平均値|男性・女性の平均値と握力測定のポイント
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
初めて評価する方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎TUGテストのカットオフ値とは|初めて評価する方のための基礎知識と測定方法
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
FRTの目的や評価方法などについてさらに知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎ファンクショナルリーチテスト(FRT)の目的と評価方法・カットオフ値について
[準備するもの]
[測定方法]
[注意点]
[アドバイス]
5m歩行テストの評価方法やカットオフ値などについてさらに知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎5m歩行テストの評価方法・カットオフ値|高齢者の身体能力評価について解説
以下に運動器機能向上加算の計画書の作り方について解説します。具体的に計画書を載せた上で、具体例を挙げながら説明しますので、ぜひご参考ください。
利用者基本情報は、介護サービスを受けるための基本的な情報のことを指します。情報は、利用者本人やその家族から提供されます。
基本情報については、直接利用者に聞いて記載することもできますが、まずは既に得られている情報を確認して記載するのが良いでしょう。
以下の書類を参考にするとスムーズに利用者基本情報に記入することができます。
運動器機能向上加算の計画書には、長期目標と短期目標を設定しなければなりません。また、ケアプラン等と整合性のある目標を立てる必要があります。これらは、定期的な評価や計画の見直しを行い、適切なサービスの実施をするために必要になります。
厚生労働省老健局からも運動器機能向上加算の取り扱いについて、以下のように発表されています。
理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するためのおおむね3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という。)及び長期目標を達成 するためのおおむね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という。)を設定すること。長期目標及び短期目標については、地域包括支援センター等 において作成された当該利用者に係るケアプラン等と整合が図れたものとすること。
引用:介護保険法施行規則第 140 条の 63 の2第1項第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準の制定に伴う実施上の留意事項について
ケアプランとの整合性を図り、プログラム内容を決める必要性は、加算要件に必要という面だけでは語れません。
明確な目標や生活課題を設定することによって、解決するべきことを見据えて運動プログラムを組めます。
具体例については以下をご参照ください。
ニーズの実現のために、概ね 3 ヵ月程度で到達できる長期目標の例
例 1 買い物ができるようになるために、歩行能力の向上を図る。
例 2 炊事が楽にできるようになるために、機能的なバランス能力の向上を図る。
例 3 物干しが楽にできるようになるために、立位での機能的な動作能力の向上を図る。
目標達成のために、概ね1ヵ月程度で到着できる短期目標の例
1ヵ月目 歩行能力を高めるための運動に必要な基本動作が自立して行える。
2ヵ月目 家の近所の散歩が楽にできる。
3ヵ月目 30 分間程度の散歩ができる。階段1階分を楽に昇降できる。
利用者の目標やニーズに基づき、理学療法士・看護職員・介護職員・生活相談員などが協力し、各利用者ごとに以下の項目を記入します。
実施期間は運動の種類によって異なりますが、一般的にはおおよそ3ヵ月程度とされています。この3ヵ月は、コンディショニング期間(第1期)、筋力向上期間(第2期)、機能的運動期間(第3期)に分けられます。
作成した運動器機能向上計画は、利用者が理解しやすいように説明しましょう。効果やリスク、緊急時の対応などと共に説明し、利用者の同意を得ます。
介護予防通所介護または介護予防通所リハビリテーションでは、運動器機能向上計画に相当する内容を介護予防通所介護計画や介護予防通所リハビリテーション計画に記載することで、運動器機能向上計画の作成を代替できるとされています。
日常生活動作能力の向上のためには、立つ・座る・歩く・階段昇降などの日常の活動に必要な筋肉群を中心に運動します。また、転倒予防のためには、抗重力筋群に対抗する筋肉や体幹を安定させる腹筋も重要です。尿失禁予防の場合には、骨盤底筋群も対象になることがあるでしょう。
その他の運動プログラム事例については、厚生労働省作成の介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)「資料3-3 運動プログラム事例 プログラム事例(例:機能的運動期)」などをご参考にどうぞ。
また、Rehab Cloudのサイト内では、もっとたくさんの運動バリエーションを紹介しています。
▶︎【完全保存版】デイサービス・機能訓練指導員が活用できる高齢者のためのリハビリ体操・運動まとめ
目標
安全管理
評価
方法
フォローアップ
運営指導対策について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎デイサービスの運営指導(旧 実地指導)対策 |確認項目・記録書類・マニュアルなどを紹介
運動器機能向上プログラムを行うことは、フレイル予防に一役買います。プログラムを行う際の流れは以下の通りです。
運動器機能向上加算は、個別の評価と運動プログラム設定に基づいて行います。フレイル予防をするのであれば、それに見合った計画を立てる必要があるでしょう。
フレイルは日々の活動量を増加させるといった、簡単で低負荷な運動支援でも有用となる可能性があります。個々の対象者の状況に合わせた上でフレイル予防が適切に行えるように意識して計画書を作成しましょう。
※運動器機能向上加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています。
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